芸術と食の魅力を探求~スペイン:バルセロナ・マドリッド編~
10月13日
地球探検プロジェクトはアラブの国々からヨーロッパへ。今回訪れるのはスペインとポルトガルの2か国。芸術と食を堪能することがテーマだ。まずはバルセロナから。また行きたいとずっと思っていた街である。
バルセロナではアパートメントの一室に宿泊した。Airbnbではなく、ホテルズ・ドットコムで予約。カタルーニャ広場からランブラス通りへ入り、横に折れてすぐの絶好のロケーション。夜はオペラやカタルーニャ音楽堂のコンサートへ行く予定だったので、すぐ帰れる場所に宿泊したかったのだ。リビングが広いワンルームでキッチン付き。洗濯機もある。管理を担当しているお姉さんと待ち合わせて、鍵の受け渡しをはじめ、セキュリティやゴミ出しについてなど、もろもろの説明を受ける。諸条件が書いてある契約書があり、サインした。
最初にフランサ駅へ鉄道の切符を買いに行った。ネットで買おうとしたが、英語ページから入っても途中でスペイン語表示になってしまい、切符のルールを確認できなかったのであきらめ、窓口へ行くことにしたのだ。でも窓口のおじさんは、こちらがスペイン語を話せないからオーダー内容を紙に書いて渡したにもかかわらず、紙を全く見てくれない。サービスのかけらもない応対だった。早速スペインらしい洗礼を受ける。
おなかがすいていたので駅近くのガイドブックに載っていたバルを目指すも休業日。サンタ・マリア・ダル・マル教会~ピカソ美術館のあたりはおしゃれな感じの飲食店も多くにぎわっていたので、適当に選んでその中の一軒に入ってみた。
タパスを4品注文したがどれも味が濃く、はずれだった(トホホ)。
一生はアラブの国ではお酒が飲めなかったので、スペインに来て生き返ったかのように喜々としてワインを飲んでいた。
ぷらぷらと散歩しながらサンタ・カタリーナ市場へ。市場の中のレストラン、クイナス・サンタ・カタリーナは繁盛していて活気があった。イベリコ・ハムは室温でとろけそうになった脂身をじわーっと噛みしめるのが幸せ。
スペインに来たからにはパエリアを。
常に満席な店内。観光客も地元の人もいる。
私たちはカウンター席で、調理しているところや出来上がった料理を配膳のスタッフが受け取るところを間近に見られたので、どんな料理があるのかひたすら観察していた。今どきの軽め・シンプルな味付けが多そうだったが、お肉料理はドーンとボリュームがあった。
10月14日
今日からは音楽三昧となる。最初のコンサート場所はカタルーニャ音楽堂。ウェブサイトでチケットを予約したとき、注文できたのか確信できない構成になっていてちょっと不安だったのだが、ちゃんと予約されていた。
前回バルセロナに来たのは1998年だったが、当時と比べ、音楽堂は2006~2008年にリノベーションされてとてもモダンになっていた。古いものはそのまま生かして、うまくガラスや直線などのモダンな要素とつなげていた。
オーディトリウムに入るとステンドグラスや装飾に目を奪われる。こんなコンサートホールを造ろうと考えた発想に驚くばかり。
本日のコンサートは、イヴァン・フィッシャー指揮ブダペスト祝祭管弦楽団。初めて生で聴くのでとても楽しみにしていた。曲目はMiah Perssonのソプラノでリヒャルト・シュトラウスの「四つの最後の歌」、Tassis Christoyannisのバリトンでマーラーの「さすらう若人の歌」、そしてマーラーの交響曲第4番(Perssonの独唱)。
何に驚いたかと言えば、まず演奏前のチューニング。通常のa音だけでなく、g→a→bと入念に3音も合わせるのだ。そういうオーケストラは初めて見た。
フィッシャーは背が高く、スラリとしている。(私は指揮者の基準がマイケル・ティルソン・トーマスなのだが)トーマスのように「それは思いつかなかった!」とか「一本取られた!」と感じるアイディアではないが、いろいろな表現をやっていた。オーケストラは演奏におけるメンバー同士のコミュニケーションやアンサンブルの度合いが他のオーケストラにはない完成度。リヒャルト・シュトラウスよりもマーラーの方が弾きこんであって、多彩な表現を持っている印象を受けた(おそらくリヒャルトの方が難しいのだと思う)。
最も感銘を受けたのは交響曲の第3楽章(弦はビブラートとノンビブラートを明確に弾き分けていた)。短調から長調に和声が変わったところの内声の音程の取り方とバランスが絶妙な明晰さで、和音の変化がそれはそれは美しく浮かび上がったのだ。私は「西洋音楽ってこういうことなんだ」「これを聴かせなきゃいけなかったんだ」と思った。
マーラーでも全然ごちゃごちゃしない、トウッティ(全員で弾く部分)でもうるさくない響きのオーケストラは、世界でも屈指だと思う。
アンコールはメンバー全員が立ち上がってカタルーニャ民謡の「鳥の歌」をアカペラで歌った。基礎教育として声楽をやったメンバーが多いみたいで、意外にうまい。このサプライズに会場は大いに沸いた。
フィッシャー「やるなあ」という感慨とともにホールを後にした。次はぜひブダペストの本拠地で聴きたい。
10月15日
カタルーニャ広場からグラシア通りを散策。ガウディ建築のカサ・バトリョ。入場者の列ができていた。
お昼はパエリアのお店(Castell de Xativa)へ。うさぎとチキン、グリーンピース、いんげん豆、アンティチョークが入ったバレンシア風パエリア。
初体験のフィデウア(パスタのパエリア)。具は魚貝類。アイオリソースをつけて食べる。ちょっと焼きそばっぽい。おいしかったが、やっぱり私はお米のパエリアの方が好き。
バルセロナでの目標の一つは伸びて来た髪を切ることだった。海外で美容室を利用するのは初めて。インターネットで調べたところ、ランブラス通り周辺には美容室はなさそうだった(観光地だから)。日本語の書き込みを見ると、スペインの地場の美容室では日本人が満足するようなカットをしてもらうことは難しいといくつも書いてある。果たしてうまく行くかな~と思っていたら、グラシア通りから一本横に入った通りを歩いているとき、美容室を見つけた。
戸を開けて入り、今日の夕方カットしてほしい旨を伝えるとわかったという返事。予約の名前を言おうとしたら、名前はいいから時間に来てくれればいいと言う。本当に大丈夫なのか不安になる。
遅い昼食をパエリア屋でゆっくり取り、街をぷらぷら散歩した後、約束の時間に店へ行った。受付のときいたマダムがちゃんと私の顔を覚えていて「待ってたわよ」と笑顔で迎えてくれた。担当してくれた美容師にも「カット」だときちんと伝えてあった。(スペインなのに)ちゃんとしているではないか(偏見か)。
最初にシャンプーした後、カットが始まった。美容師さんはスペイン語、私は英語だがコミュニケーションは成り立った。
大満足の仕上がり。ありがとう!
町の中心カタルーニャ広場。
夜はリセウ歌劇場でヴェルディの「椿姫」。前回バルセロナに来たときは火事からの復興工事中で公演は行われていなかったので、初めて劇場に入る。チケット購入に関しては、こちらはカタルーニャ音楽堂と違い、バーコードのEチケットなので利用しやすかった。
開演前に舞台セットがある。ヴィオレッタが死んでしまったことが暗示されており、そこから遡って物語が始まるという設定だ。
しかし、イケテルアイディアはそこまでだった。ビブラートがきつく技巧の隅々がいいかげんなヴィオレッタとただ今勉強中みたいなアルフレードのトラヴィアータ。面白かったのは、ダンサーが闘牛士と牛の設定だったこと(観光客向け?)。
他のプロダクションはどんななのだろうか。良い席を奮発したことが悔やまれた。
10月16日
サグラダファミリア。建築工事に並んで修復工事も行われており、正面はほぼ幕に覆われていたので、「壮大に工事中」な印象を受けた。
モンタネール建築の代表、サン・パウ病院。サグラダファミリアからは並木道が続いていていい感じ。
モンジュイックへ移動。港と市街の眺めが素晴らしい。クルーズ船も停泊していた。
遠足なのか地元の子どもたちがランチ中。何を食べているのかそおっと覗いてみたところ、小さな弁当箱に細かく詰められている日本とは大違いで、みんなのお弁当はダイナミック。深さのある大ぶりなタッパーウエアにトマトソースであえたペンネだけがどーんと入っているとか。おおらかで楽しそうだった。
丘からスペイン広場を望む。両側は見本市会場。
カタルーニャ美術館が堂々と建つ。きれいに整備されていた。
かつては闘牛場だったが、今はショッピングモールになっている。
ランブラス通りは観光客でとにかく混雑。平日でこのにぎわい。
サン・ジョセップ市場。前に来たときは皮をはいですぐのような肉が吊り下げられて並んでおり、地元の人々が買いに来る市場という印象だったが、すっかり観光市場になっていてびっくり。入ってすぐの場所にはカットフルーツとか、つまめる生ハムなどを売るお店が並んでいる。市場は観光のコンテンツとしてはとても強力なので、観光産業が発展するにつれこういう傾向になるのは避けられないのだろう。
カウンターで食事ができるお店も大繁盛。みんなが何食べているのかをちらちら見ながら歩くのも楽しい。
お店で一番高い5年熟成の生ハムを買ってみた(100グラム18.9ユーロ)。脂身が甘かった。
アパートメントで料理に挑戦。1回で使い切れるものだけで作らなければならないので知恵を絞り、きのこをチーズ・クリーム煮に。うまくできた。
白、赤、カヴァ(スパークリング)と楽しんだ。白ワインのリアス・バイシャスはスペイン北西部、ガリシア地方の大西洋沿岸で作られる、スペインで最も上質な白ワインとして知られている。赤のリオハは、エブロ川上流に位置する、スペイン最古のワイン産地。世界的に高く評価されている。
夜はまたリセウ劇場にて、バルセロナ出身のジョルディ・サヴァール率いるコンセール・デ・ナシオンによるヴィヴァルディの音楽劇「FARNACE」の公演へ。夏にブルージュの古楽の音楽祭で聴いて以来、サヴァールづいている。歌手5人と古楽器奏者17人による演奏。一人ひとりの技術が非常に高い、生き生きとした音楽だった。真摯で真っ当な音楽家集団である。
10月17日
サンツ駅からマドリッドへAVE(スペインの高速鉄道)で移動。
満席。乗客の荷物が多く、置く場所が少ないので乗車時は混乱していた。
速度表示がなされる。
ラス・ベンタス闘牛場近くのイビスホテルに4泊する。残念ながら闘牛はシーズンが終わっていた。
グラン・ビアの日本人にも有名なパエリアのレストラン、La Barracaへ。お昼の遅い時間に行ったにもかかわらず満席で待つ。席に着いたのは15:20頃だったが、その時間に入店してきた地元の他のお客さんもいて、急かされる雰囲気は全くなくて驚く。
ソパ・カステリャーナ。にんにく、パン、ポーチドエッグのスープである。
パエリアはどれにしようか迷ったが、ミックスをチョイス。チキンと魚介が入っていた。アイオリソースがとてもよく合う。ボリュームたっぷり。
隣の地元の人たちは、お米と具が別々にサーブされる品を頼んでいた。とてもおいしそうだったが、具を混ぜ込んで炊くのとどう味が違うのだろうか?次回来たときは、ぜひそちらをオーダーしたい。
夜はテアトロ・モニュメンタルでRTVEの放送オーケストラの公演に行った。チケットの直前割引があった。
RTVEのオーケストラはこのホールを本拠地として活動している。公会堂みたいな感じ。お客はシニアがほとんどで、たまに50代かなという人を見かけ、若い人はほとんどいない。空席も結構あった。
指揮は音楽監督のCarlos Kalmar。プログラムは現代曲(Joan Magrane)、ルチアーノ・べリオの作品、ブラームスの交響曲第1番と意欲的で、エスパーニャなオーケストラの演奏は楽しめた。
演奏において何か新たな発見があった訳ではないが、ブラームスの第4楽章を聴いていて、ハ長調の主題が始まるところで、これは他のどの調性でもない、ハ長調でならなければならなかったのだということをあらためて思った。作曲家としてあまたの作品を生み出した果てにこの交響曲を書いたブラームス。この「ハ長調」を書いたとき、どんな思いだったのだろうと創作の道のりに思いを馳せた。音楽史上の真の傑作の一つだと思う。
10月18日
美術館めぐりの1日。連邦政府庁舎。周辺は重厚な建物が並ぶ。
大道芸人のおじさんが路上でメーク中。
プラド美術館。例によって作品数が多いので、主な作品に絞って見た。ゴヤの作品が充実していた。
美術館は塀もユニーク。
主に20世紀の作品を所蔵するソフィア王妃芸術センター。
伝統とモダンをうまく組み合わせた建物。
明日無料開放になると知り、見学するのは翌日にした。
マドリッド最大のアトーチェ駅。大きい。
1992年に開設された新駅舎の中は植物園風の演出がなされている。
その人口池にはたくさんの亀。
道路を走る姿が目立っていた、みんなで漕いで走るカフェ。乗ってみたかった!
ティッセン・ボルネミッサ美術館。15世紀~20世紀まで有名な作品が数多くあったが、中でもギルランダイオの「ジョヴァンナ・トルナブオーニの肖像」は、細かな描写と鮮やかなオレンジ色が強く印象に残った。
ドガ「緑の服の踊り子」、マネ「乗馬服の婦人」、ピカソ「鏡を持つアルルカン」など充実したコレクションだったが、20世紀絵画は時間切れとなり、ゆっくり見られなかったのが残念。
市役所本部があるシベーレス宮殿、広場に面している。
この日のコンサートは国立音楽堂でスペイン国立管弦楽団のコンサート。
1988年に完成したホールは2324席あって大きい。
指揮はスペイン新進気鋭のAntonio Mendez。山田和樹さんくらいの年代で目下アスコナス・ホルト(マネージメント会社の名前)が盛大に売り出し中。世界の主要なオーケストラへの進出を果たしつつある。プログラムは1曲目がRicardo LlorcaのThermidor、オルガンが入るエスパーニャなリズムとメロディのわかりやすい曲で楽しく聴けた。2曲目がJorge Luis Pratsのピアノでシューマンの協奏曲。ブロンフマンくらいの世代のおじさんで自由に弾く。ときどき音をはずすが許容範囲、音はきれいでこれも楽しく聴けた。後半はラフマニノフの交響曲第2番だったが、響きにまとまりがなく拡散して聴こえた。ホールのせいか。アントニオは国際的にブレイクしなさそう、、、と私は感じたが、果たして今後どう成長するだろうか。
10月19日
一生は歯ぐきが腫れ上がり、熱が出てダウンしてしまった。という訳で当初計画していたトレドへのショート・トリップは見送り、ホテルでゆっくり過ごした。
夕方からサン・ミゲル市場へ。1916年に建立された市場は2009年にリニューアルされ、グルメスポットとなった。観光市場ブームなのだ。
各お店にはワイン片手にピンチョスをつまむカウンターがある。スペインでガスパチョを飲むのは初めて。玉ねぎやピーマンが主張せずに統合された味になっていた。
カニとウニのグラタン。温めて出してくれるが、「出来立てアツアツ」という感じではなかったのでイマイチ。
生ガキにもトライ。日本で食べた方がおいしい。
えびとほうれん草のクリーム・コロッケ。これはアツアツで味もばっちりだった。夏にブリュッセルとアントワープでコロッケ(クロケット)を食べておいしかったので、それ以来ヨーロッパのクロケットに興味津々なのであった。
サングリアも試した。本場ならではの違いは特に感じず。手前のラップ・サンドはすり身のシラスうなぎとスモークサーモンが入っている。
どんな味なのか興味があるシラスうなぎ。本物は希少で非常に高価であるため、カニカマのようにすり身(surimiと説明されてあった)で作られた代用品があって、ピンチョスでもよく見かけた。この代用品、何品か食べてみたけれど、にょろにょろ感以外はあまり特色がない味で、ピンと来なかった。見た目はすり身でできているように見えない!
サン・ミゲル市場はお店ごとに特色があっていろいろ試すのはとても楽しかった。もっとも概して観光スポット化しているので、味のレベルは一定水準以上をキープしているものの、グルメを追求するような場所ではない。
市場の後、昨日見送ったソフィア王妃芸術センターへ向かった。短い時間しか取れなかったため、ピカソの「ゲルニカ」に時間を集中配分させたのだが、すごい迫力でいつまでも見ていたかった。芸術表現で戦争の悲惨さを伝えているのだが、題材を作品に昇華させることで何倍ものパワーにしてテーマを訴える、昇華させる力の偉大さを感じた。
こういう作品を含む展示が週に1日無料で公開されて、誰でもいくらでも見られるってすごいことだと思う。これも国力の一つだろう。
夜はまた国立音楽堂でレオニダス・カヴァコスとユジャ・ワンのデュオ・リサイタルを聴いた。チケット価格は昨日のオーケストラに比べてべらぼうに高いが、席は埋まっていた。
プログラムはブラームスのヴァイオリン・ソナタ3曲。CDも出していて、二人で各地を公演している。
カヴァコスはオランダのコンセルトヘボウ管弦楽団で2014-2015シーズンのアーティスト・レジデンシーになるなど、今評価が非常に高い。生で聴いてみたかったのだが、プロフィール写真から想像したとおりの繊細で才気ある音楽だった。他方、ユジャの伴奏は想像以上の素晴らしさ。きれいな音、表現が多彩でヴァイオリンへの合わせ方のセンスがよい。ドレスも基本的にいつもの路線でシースルーっぽいのだが、素敵だった。
大きなホールの舞台から距離がある席だったので、小さなホールで至近距離だったらさらに良かったと思う。
10月20日
昼食にマドリッドの郷土料理コシードの有名店La Bolaへ食べに行った。地元の人も観光客も来ていて大繁盛。
カタルーニャ風ほうれん草炒め。松の実とレーズンが入っている不思議な味。
コシードには食べ方がある。土鍋で出てくるのだが、まず煮汁をスープとして食べる。そうめんみたいなパスタが入っている。
薬味はトマトソース、玉ねぎ、スペイン唐辛子。
土鍋には具が残っている。
鍋の具を皿にあける。ジャガイモ、キャベツ、ひよこ豆、腸詰、肉。適宜薬味でアクセントをつけながら食べる。
久しぶりにずっしりとしたものをおなかいっぱい食べておいしかった!
王宮~スペイン広場周辺を散策。
王宮前にそびえるテアトロ・レアル。
この夜観劇したのはドニゼッティの「連隊の娘」。新演出の初日。
テアトロ・レアルは劇場のガイドツアーもアーティスティックやテクニカルのコースがあったりして、とてもがんばっている印象を受けた。舞台機構もハイテク、説明の模型やパネルがある。
劇場の外見はトラディショナルだが、ホワイエなどのインテリアはモダン。過去のプロダクションの写真がずらっと飾られており、舞台衣装やかつら、小道具も展示されている。
劇場内のレストランやバルもとてもおしゃれ。お客さんも概してファッショナブルだった。来ている人々がおしゃれなのはオペラハウスだけではなく、昨日のコンサートホールでも感じた。マドリッドはそもそものおしゃれの標準が高いのかもしれない。
ニューヨークのメトロポリタン・オペラ、ロンドンのロイヤル・オペラ・ハウス、ウィーン国立歌劇場との共同制作によるプロダクションはしっかり造りこまれており、レベルが高かった(リセウと大違い)。
指揮:Bruno Campanella
演出:Laurent Pelly
マリー:Aleksandra Kurzak
トニオ:Javier Camarena
興味深かったのは、歌詞がフランス語であるということ。字幕に頼るために、日本でオペラを観るとき同様、お客さんが反応するまでにタイムラグがあるのだ。この距離感はオペラの文化を輸入したアジアの日本だからあるものという感覚を持っていたが、ヨーロッパ内であっても同様にある、ということが私的には大きな発見だった。
作品はすごく楽しめた。トニオのJavier CamarenaはハイC、ハイCisを全部成功させて大きな拍手を浴びていた。テアトロ・レアルは劇場としてバランスがとれていて素晴らしかった!
マドリッドは歴史と風格がある街で、芸術が街にあふれていた。地下鉄にスリがいて、爆弾を仕掛ける人がいるというイメージを持っていたが、行ってみたらずいぶん違った。
(2014.10.13~10.21)
続いて、サン・セバスチャン・ビルバオ編へ