伝統文化に浸る~インドネシア:ジョグジャカルタ編~
9月19日
次の訪問地は古都ジョグジャカルタ。仏教遺跡のボロブドゥールとプランバナンを訪れるのを目的に旅を組んだ。
ジャカルタからのエア・アジアでは、機内に入ると冷房の冷気で真っ白。1時間ほどのフライトであった(QZ7552便)。
街の中心マリオボロ通り。自転車タクシーのベチャがたくさん。いたるところで開発が行われていた巨大なジャカルタとは全く異なる時間と風景が流れる。
生活用品が揃うブリンハルジョ市場。人々でにぎわう。
王宮は残念ながら入場時間に間に合わず見学できなかったので、周辺を散策する。バイクが多い。暑くてもみんな長袖を着てマスクも着用。
翌日仏教遺跡のボロブドゥールとプランバナンを訪れるために、ホテル(イビススタイル)のツアーデスクで足となるタクシーの予約をした。
夕ごはん時になると、街かどのレストランにはミュージシャンがやって来る。
観光案内所で伝統舞踊を観に行きたいと言ったら、ちょうどその日に近くで「マハーバーラタ」の上演があることを教えてくれた(何と無料!)。始まる10分ほど前に行ったら既に人でいっぱい。席は埋まっていたけれど、外国から来た私たちを見て、席を詰めて2席空けてくれた(感謝!)。
最初はお姫様(?)の入場の場面。ずっと中腰で踊るので習熟が要りそう。バティックの衣装を見て、昔銀行員だったとき、ジャワ島のバティックの生地を輸入しているお客さんに商品を見せていただいたときのことを思い出した。
こちらは王子様(?)言葉がわからず台詞を理解できないのが残念。
入れ替わり立ち替わり登場人物が変化し、ソロ的なもの、群舞のようなものとバリエーションがある。こちらはお笑い担当の三人組。「トゥーランドット」のピン・ポン・パンのような感じ。
笑いを取る場面では、みんなが知っている話や時事的な話題を織り込んでいるようで、すごくウケていた。このような古典芸能は実際のところ、現代のジャワ島の人々にとってどのくらい身近な存在なのだろうか。その辺りのリアルな感覚を知りたいと思った。
地元のお偉いさんと思われるVIP席。お弁当が配られていた。こういう場合、日本だと幕の内弁当だけれど、インドネシアだと中身は何だろう?
本格的な「マハーバーラタ」の上演を体験できたのは大変ラッキーだった。他方で、言葉がわからないのと予習していなかったのが残念。知識があれば、さらに楽しめたと思う。次に来るときはこの教訓を生かしたい。
物語は延々続く。途中休憩もなし。
鳥に乗ったお姫様。出番を前にスタンバイしているところ。
音楽は大きな編成のガムラン。ジャワ島のガムランを初めて聴いたが、バリ島で聴いたガムランとずいぶん印象が違った。基本的にモデラートのテンポでのユニゾン。各楽器のばらけたリズムが同時に鳴るガムランのイメージ(なぜか私はそう思っていたのである)とは異なっていた。ジョグジャカルタのガムランは宮廷音楽の要素がより強いのだろうか。ミュージシャンは30人ほど、打楽器+金管(少し)+笛+歌。
19:30から始まった上演は、23:00になっても終わる気配なし。戦いの決着が着かない。翌日の観光への出発時間が早かったため、最後まで観るのをあきらめてホテルへ戻る。劇場からとても去り難かった。
Wayang Wong Mahabarata
Jumenengan Prabu Kalithi
Bangsal Kepatihan, Yogyakarta
Directed by Made Wijaya
9月20日
8:00にボロブドゥールへ向けてホテルを出発。1時間ほどで到着。暑かった。ガイドさんによると、やおら出かけた私たちと違って、大方の日本人は日の出に合わせて早朝に行くそうだ。
ボロブドゥールは8~9世紀のシャイレンドラ王朝の時代に建造されたとされる大乗仏教の遺跡。いくつもの建造物群があるのではなく、高さ34.5メートル、最下部の基壇の1辺が123メートルの遺跡がドーンと一つあるのが特徴だ。だから遺跡全体のスケールとしては意外とコンパクトな印象を受けた。
総延長5キロメートルに及ぶレリーフには、仏陀の生涯などが描かれている。見てストーリーが理解できるほど精巧にできており、大規模な修復が行われたこともあって保存状態も良い。
4層に分かれた回廊をめぐりながら昇ってゆく。
うちにある世界遺産のビデオでは、ボロブドゥールはヤシの樹海の中にあって、静けさの中に忽然と現れるかのように紹介されていたが、行ってみたら町から近いところにあって、周りにはごちゃごちゃとした建物や看板などが結構あった。
最後の階段を上がるとストゥーパ(仏塔)が並ぶ円壇に到達する。
ボロブドゥール遺跡は1814年に発見されるまで、1000年以上もの間土の中で忘れ去られており、なぜ土に埋まっていたのか謎に包まれている。今も信仰の対象になっているバガン遺跡とは異なり、ここはあくまで遺産として人々が訪れている点が特徴的だった。とても暑く、遺跡内に座ってゆっくりできる場所は少なかったが、ずっと眺めていたい景色だった。
参道にはお土産物屋が続く。
現地のタクシー運転手兼簡易ガイドさんとは英語で会話するのだが、だんだん疲れてきた。彼らは学校で文法を叩き込まれた日本人と違って、「身体で覚えた」英語なのである。したがって文法など、いわばむちゃくちゃ。このむちゃくちゃを一生懸命聴いて言っていることを理解しようとするのは、えらい疲れるのである。文法をきちんと学べることは恵まれていると知るとともに、身体で覚えた英語を使ってたくましく稼ぐ彼らのパワーに感心した。
続いて訪れたプランバナン遺跡。ロロ・ジョングラン寺院を中心とした史跡公園。
サンジャヤ王朝の9世紀に建立されたヒンドゥー寺院のロロ・ジョングラン。中央のシヴァ神殿(高さ47メートル)をはさんでブラフマ神殿とヴィシュヌ神殿が並び、さらに3つのヴァーハナ堂(乗り物堂)が並んでいる。焔のように切り立った形はインパクトがある。
彫刻はデザイン的には単調に感じた。
インドネシア人以外の団体客をほとんど見かけなかった。外国人は各々車とガイドをチャーターしてやって来る。
16世紀に地震や火山の爆発で倒壊し、1930年代から復元が始まったロロ・ジョングラン寺院。近年も2006年のジャワ島中部地震、2010年のムラピ山の大噴火によって大きな被害を受けた。寺院内には修復されないままの場所がたくさんある。
史跡公園内には、セウ寺院などの仏教寺院も存在するが、今回は訪れなかった。次回はぜひ訪れてみたい。
プランバナンを見下ろすボコの丘。煙っていたが、くっきり晴れるとムラピ山(2930メートル)までを見はるかす。
9世紀の宮殿址は発掘・復元の工事中。工事の鉄柵の中を歩いているとき、帽子のひさしで視界が欠けていたら鉄柵に顔面をぶつけた。しばらく顔が腫れて痛かった。
夕食はトリップアドバイザーで高評価だったインドネシア料理の「KESUMA」で野菜のコースを食べた。雰囲気のよいお店。青菜とガーリックのナシゴレンがシンプルで美味だった。
ジョグジャカルタでは思いがけず体験できた「マハーバーラタ」が非常に思い出深いものとなった。こういう出会いも旅の醍醐味の一つだろう。
2013年から日本の古都である金沢のオーケストラ・アンサンブル金沢を取材し、伝統文化が色濃く残る街の未来について考えてきたことが、ジョグジャカルタで伝統文化に浸る機会を引き寄せたのかもしれない。そんなことを思った。
(2014.9.19~9.21)
続いて、シンガポール編へ