トップ>here

PMFのチケット発売でわかったアメリカ、東京、大阪それぞれの違い

3/22にチケットが一般発売されたPMF2009(パシフィック・ミュージック・フェスティバル)のPMFオーケストラ東京・大阪公演。

ここ10年くらいコンサートといえば、直前に主催者に電話をし、チケットがあれば行くし、なければあきらめるという生活を送っていた私も、今回ばかりは発売日にサントリーホールのP席(!)を買いました。

指揮者の紹介文には何を書く?

今回このチケット購入を通して、私の目に止まったのが、ちらしに書いてあるマイケル・ティルソン・トーマスの紹介文。

チケットスペースによる東京公演のちらしの記載は、以下のとおり。

現在サンフランシスコ交響楽団音楽監督、ニュー・ワールド・シンフォニー芸術監督、ロンドン交響楽団首席客演指揮者。これまでに、ボストン交響楽団首席客演指揮者(1969-74)、バッファロー・フィルハーモニック管弦楽団音楽監督(1971-79)、ロサンゼルス・フィルハーモニック首席客演指揮者 (1981-85)、ロンドン交響楽団首席指揮者(1988-95)を歴任し、ヨーロッパやアメリカの主要なオーケストラに客演している。

おー、すごい。これを読んで興味を持ったり、「行ってみようかな」と思う人はおそらくゼロであろう。

指揮者の紹介は、ポスト歴を羅列するのが常識なのか?

早速、手元にある指揮者の紹介文をひっくり返して見てみました。

【ニューヨーク・フィルによるマゼールの紹介文の書き出し】

ロリン・マゼールは、これまでに150以上のオーケストラで、5000回以上オペラとコンサート公演を指揮してきましたが、2002年9月にニューヨーク・フィルハーモニックの音楽監督に就任しました。

【シカゴ交響楽団によるハイティンクの紹介文の書き出し】

50年以上にわたる世界的な指揮者としてのキャリアを経て、アムステルダム生まれのベルナルト・ハイティンクは、今日最も称賛される指揮者の一人である。

一見何でもないようですが、マゼールは150、5000という数字が、エキセントリックで超人的な様、しかも何だかポジティブだというキャラクターを伝えているし、ハイティンクの方は、写真がなくても、これだけであのたたずまいが浮かんで来て、皆納得。

いろいろ見てみると、指揮者の場合、確かに今までどういうキャリアを経てきたのかという紹介はあるものの、海外では「いつ、どこで、何をやって、どうだったか」の成果の紹介に重きがあり、ポストが羅列されるだけということはありません。参考までに、この傾向は歌手になると、さらに顕著になります。

【カーネギーホールによるトーマス・ハンプソンの紹介文の書き出し】

アメリカのバリトン、トーマス・ハンプソンは、今日世界で最も称賛され、引く手あまたの歌手の一人である。彼の「美しく叙情的、なめらかで柔軟なバリトン」(TIME誌)は、200近い歌曲、オペラ、オラトリオ、声とオーケストラのための作品の録音で聴くことができる。

日本の場合、ちらしの制作を外部に委託するのでしょうから、個々のアーティストや公演について詳しくない外部の制作者の方が、主催者が出したパブリシティ資料から、適切な選択をできるように配慮した文章を出すこと、あくまでも目的はチケットを買ってもらうことにあるという内容である必要があるのだと思います。

東京と大阪はこんなに違う

次は、ABCチケットセンターによるPMFオーケストラ大阪公演のマイケル・ティルソン・トーマスを紹介する部分。

記念すべき20周年の指揮者には、バーンスタインと共に第1回から芸術監督を務めたマイケル・ティルソン・トーマスが、待望の再登場!現在サンフランシスコ響、ロンドン響でポストに就き絶大な人気を誇るマエストロが、定評あるマーラーの交響曲第5番で感動的なアニーバーサリー・イヤーを飾ります。

文面全体がコテコテなのですが、売ろう!というガッツが感じられます。私は関西に住んだことがないので知らなかったのですが、関西のちらしは濃いのですね。びっくりしました。さらには、

PMFオーケストラが破格の集中力と爆発力をみなぎらせて、ザ・シンフォニーホールに壮大な音楽を轟かせます。

とある。いやMTTでは「爆発」したり、「轟か」ないと思うけど、これが関西流訴求ポイントなのでしょう。

同じ公演のプロモーションでも、東京と大阪ではテンションのレベルが全然違っていて面白かったです。

最後に、もし私がマイケル・ティルソン・トーマスのちらし紹介文を書くとしたら、

広く“MTT”と呼ばれるマイケル・ティルソン・トーマスは、サンフランシスコ交響楽団の音楽監督として斬新なプログラムで多くの新しい聴衆を獲得、その活動で今やアメリカのリーダーと評されている。また教育活動においても、自らマイアミに創設したニュー・ワールド交響楽団が、既に世界中のオーケストラに600名以上の人材を輩出し、音楽界に確たる地位を築き上げた。今回は、サンフランシスコ交響楽団との録音が4つのグラミー賞に輝き、現代のマーラー解釈の第一人者と国際的に評価されたマーラーの交響曲でPMFに再登場。大きな期待が寄せられている。

公演予定

(2009.3.22)