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MTT/SFSのマーラー歌曲集のCDがやって来た
ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団による、マーラーのオーケストラ伴奏付き歌曲集のCDが届きました。
このシリーズ、毎回トラック1の冒頭でただならぬ雰囲気をかもし、聴き手を「ムム」と引き込むつくりが印象的ですが、今回これを担ったのは、
トライアングル
トライアングルにやられるとは思いませんでした。
演奏の方は、実演を聴いたときは、子どもの魔法の角笛が一番印象が強かったのですが、CDを聴いたら、曲のキャラクターのせいもあるのかもしれませんが、さすらう若人の歌とリュッケルト歌曲集が面白く聴けました。
KEEPING SCOREのアイヴズ編で、ティルソン・トーマスはアイヴズを聴く面白さについて、同時並行でいろんな音楽が鳴っている中で、自分の立脚点に立って他と対峙すること、違うものと自分との関係性を体験することにあるのだという趣旨のことを言っていました。
自分の立ち位置は様々に変化し、その都度見え方も違って、常に相対的であるということだと思いますが、今回のさすらう若人の歌とリュッケルト歌曲集は、マーラーの音楽もそういう聴き方ができることを提示している演奏だと思います。
歌曲の場合は、歌の存在が大きいので、主として歌手の立ち位置に聴き手も立つことになるのですが、声とオーケストラの距離やハーモニー、組み合わせが様々に変化する様が非常に清澄な中に浮かび上がっていて、発見があります。
マーラーが歌曲の素材を展開させて交響曲を書いたということもありますが、ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団コンビのマーラーのエッセンスが詰まっているので、彼らのマーラーを知らない人もこれを聴けば、彼らがマーラーで何を表現しようとしているのかがわかる、そんなCDだと思います。
ところで、私などは涼しい部屋でソファにふんぞり返ってオーディオ鳴らし、
トーマスのアイディアって、ほんと素晴らしいわあ
と、ついやってしまうのですが、最近これは危険だと思っています。なぜなら、MTTを聴いていると、自分でものを考えるよりもMTTに考えてもらった方がはるかにいいアイディアが出てくるから、自分でものを考えなくなる。受験勉強で問題解くときに自分で考えないで先に答え見ちゃうのと同じような態度になりがち。だからこれを続けると
バカになるかも
と思うのでした。サンフランシスコ交響楽団もそういう傾向になっているときがたまにある。私は密かに、サンフランシスコ交響楽団に死角があるとしたら、これだろうなと思っています。
というわけで、トーマスのアイディアに感心するところで終わらせず、それを刺激やヒントにして、自分の中で活用していきたいと思います。
(2010.8.20)