mtt on music
チャイコフスキー:交響曲第4番
KEEPING SCOREプロジェクトのパイロットとしてリリースされた
DVD。私がサンフランシスコに「見に行くしかない」と思ったきっかけです。
このDVDの狙い
クラシック音楽の楽しみを幅広い層に広げようというKEEPING SCOREプロジェクト。このDVDでは、クラシック音楽は特別なものではなく、人間の生活に昔からあった身近な音楽や、人々の感情などを表現することで成り立っているというメッセージを伝えています。
彼らはチャイコフスキーの交響曲第4番をファンファーレやワルツ、遊びの音楽など単純な要素に分解することで、このことを伝えました。
making music
彼らがこのDVDで伝えていることのもう一つは、音楽をつくる過程を見せるということ。
音楽を1楽章から紹介するのに合わせて、ティルソン・トーマスとサンフランシスコ交響楽団がコンサートの本番に向けて音楽を創っていくプロセスを様々なシンフォニーのスタッフの仕事紹介も織り交ぜながら見せています。
見ものは、ティルソン・トーマスの家のシーン。きっちりしたファイルがずらーっと並ぶ資料室や、やたらと椅子が置いてあって、場所を変えながらいつまでもやっていられる練り上げ部屋。ティルソン・トーマスは、過去にいろいろプレゼントされたものを律儀に飾っているらしいとか、バリ島(?)の打楽器まであるとか。
ライブラリアンがティルソン・トーマスのスコアへの書き込みを一人ひとりのパート譜に転記しているシーン。コンサートマスターやオーケストラメンバーと個別に細部の表現について、打合せをしているシーンなど、見所満載です。
少年のように目が輝いているMTT
そしてここから、なぜ100年も前の音楽を100人もの人間が情熱を傾けて演奏しているのかという謎の答えが、クラシック音楽の普遍的な魅力にあると結びます。
ドキュメンタリーの最後では、舞台で音楽をつくるということについて、ティルソン・トーマス(62歳)が語るのですが、これが少年のように目が輝いていて圧巻です。
目ヂカラ対決
このDVDで忘れてはならないのは、ライヴ演奏編にあるティンパニ奏者のデイヴィッド・ハーバードとティルソン・トーマスの目ヂカラ対決です。
リハーサル映像では、チャイコフスキーの4番1楽章の最後の音に対するティルソン・トーマス(MTT)の考えに、なんか納得できない様子のデイヴィッド。
しかし、本番のライヴでは見事に決めるのですが、ここで最後の音をクレッシェンドするティルソン・トーマスと、指揮者を凝視するデイヴィッドが交互に映され、白熱した目ヂカラ対決が繰り広げられるのです。さらに動作が止まり、残響が消えてからもデイヴィッドの凝視はしばらく続き、まるで時が止まったかのよう。最後にティルソン・トーマスの「Good Job!」アクションが決まってthe END。
今までいろいろなライヴ演奏の映像を見てきましたが、こんなのを映しているのは初めて見ました。 何度見ても笑えます。