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KEEPING SCORE ドキュメンタリーの構成
KEEPING SCORE のテレビと DVD(Blu-ray)は、以下のような構成でできています。
- ドキュメンタリー(1時間)
- コンサート映像(全曲演奏)
たまにディスク紹介に「ドキュメンタリー付き」と書いてあったりしますが、ドキュメンタリーはおまけではなく、メインです。
またドキュメンタリーは曲の「解説」ではありません。ティルソン・トーマスにガイドしてもらいながら曲の世界を探求する映画みたいなもの。
アメリカの評論家はじめ、視聴した人々が口を揃えて言うのは、「極めて」よくできているということ。他のアウトリーチものとは比較不能との評です。
日本での予約状況などを見ると、ショスタコーヴィチ、ベルリオーズ、(間あけて)アイヴズの順に人気のようですが、(3本とも素晴らしいけれど)あえて順番つけるなら
アイヴズ、ベルリオーズ、ショスタコーヴィチ
の順。返金保証つけてもいいくらいの出来です。騙されたと思って3本ともぜひ。
ドキュメンタリーに日本語字幕はありませんが、MTTのセンスは原語でなければ伝わらない。非常にわかりやすく明瞭に話していますから、恐るるに足らず(英語字幕あり)。
今回のドキュメンタリーの特徴
ドキュメンタリーは、現在(MTT、SFSのミュージシャンの語り)、過去(作曲家が過ごした街、関連する場所、資料映像)、SFSの演奏、の3つが組み合わされて話が進行します。
前3作との比較で今回特徴的な点は
- 一つのトピックにつき、目線を変えたり関連する事柄も見せる
- 映像が速いテンポで次々と切り替わる
- 映像の組み合わせに工夫がある
- 一つひとつが説明的・解説的ではなく、たくさんの「image」の集積である
- 観終わったときに、イマジネーションや視界が広がったように感じるつくり
映像作品としてのレベルが格段にアップしており、一気に見せます。
一貫しているメッセージは何か?
芸術作品を突き詰めていくと、人間とは、人間の存在とは何か?という根源的な問いに辿りつくということをテーマにしていること。
ティルソン・トーマスは、パイロット版のチャイコフスキーからずっとこのことを言い続けていますが(2008年のバーンスタイン・ガラでも同趣旨のことを言っていました)、これは哲学的にこうなるのであり、これ以外のもっていきようはないと私も思います。
個々のドキュメンタリーの見どころと取り上げているトピックスの一覧
ドキュメンタリーはイントロダクションにすぎない
ドキュメンタリーは1時間。テレビというメッセージをシンプルにしなければならない媒体の特徴もあり、あれこれ盛り込むことができません。
したがって、今回は「image」中心の構成。
これらを補足するより詳しい話・資料はウェブサイトで提供されています。ウェブサイトを見ることで理解が深まり、さらに一歩進めるのです。
このサイトがまたあ然とするくらい力作!
何人でどれだけ時間をかけて制作したのか、ぜひ聞いてみたいです。
組織をあげて制作
KEEPING SCOREは、サンフランシスコ交響楽団の自主制作(プロジェクトは10年間で、総製作費は24百万ドルだそう)。
ティルソン・トーマスのもと、プログラム・ノートの制作者、プレ・トークの担当、教育プログラムのコンテンツ制作メンバーなど、音楽学や音楽教育のバック・グラウンドがあるメンバーが総出でコンテンツを制作しています。
さらに外部の専門機関とも様々に連携。
また今回は、「KEEPING SCORE」を商標登録し、ロゴも刷新。
リリース後も放映権の販売、教育プログラムに参加する学校・先生集め、先生方への研修、カリキュラムづくり、授業での実施、生徒たちへの効果という最終的な目標まで、長い道のりが続きます。
(2009.10.3)
【補足】
地元紙のMTTインタビュー
音楽学者的になるのではなく、スコアから解き明かしたかったという言葉がMTTらしい。
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