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KEEPING SCORE

KEEPING SCORE(キーピング・スコア)は、あらゆる年代、あらゆるバックグラウンドの人にクラシック音楽をより親しみやすく、意味のあるものにしようという、2004年からサンフランシスコ交響楽団が展開している一大プロジェクト。テレビ、ラジオ、ウェブ、DVD、教育プログラムのメディアミックスで展開されています。

プロジェクトは、

  • パイロット版(2004年)
  • シーズン1(2006年)
    を経て、2009年10月にシーズン2がスタートしました。

このページでは、シーズン1での取り組みとコンテンツをご紹介しています。

KEEPING SCORE シーズン2についてはこちら

このプロジェクトの狙い

このプロジェクトの背景には、このまま何もしないで放っておいたら、演奏したい人だけいて聴いてくれる人不在で、クラシック音楽を次世代に継承できないのではないかという彼らの危機感があります。

ティルソン・トーマスが文字通りKEEPING SCOREのために考えた内容とは、クラシック音楽をもっと身近なもの、共感できるものにしようというもの。

そのために彼らがやったことは、

  • クラシック音楽を構成している旋律、和声、リズムなどが、もとをたどれば様々な人間の営みや感情といった素朴なものから発祥していることを、皆がイメージできる例を用いながら取り出してみせる。
  • それらの単純なものを出発点としながら、それを作品に昇華させる、その部分が作曲家の腕のみせどころで、クラシック音楽の面白さなのだという、出発点と出来上がりの違いを見せる。
  • そしてそれは、時代や場所の影響を受けて変遷してきたという、その変化の面白さを時代や場所、様式が異なる様々な作品を通して体感してもらう。

KEEPING SCOREは様々なコンテンツからなっていますが、これらはすべてこの共感する体験を違う切り口から提供しているものと言えます。

クラシック音楽を聴くよりどころを提示する

ティルソン・トーマスは、KEEPING SCOREの中で一貫して単純なものに還元してみせるということをやっています。

もちろん全部がすっきりと還元できるわけではありません。

それでも彼は、あまりクラシック音楽を聴いたことがない人でも、何か音楽を聴く際によりどころになるようなヒントや、構造の枠組みを提示するために単純化しているのでしょう。

このことに関連して、ピーター・ドラッカーも専門家の使命について、

専門知識それぞれについて先端的な場所にいる者は、自らの知識を理解させる責任を負うとともに、そのための大変な作業を進んで引き受けなければならない(「プロフェッショナルの条件」ダイヤモンド社)

と指摘しています。

わかりやすさという点で、ティルソン・トーマスの方法は評価できるのではないかと思います。

以下、媒体ごとの内容をご紹介します。

テレビ

ドキュメンタリーとライブ演奏がセットになっており、PBSテレビで全米に放送されました。その後既にヨーロッパや中国でも放映され、500万人が視聴したそうです。内容はDVDで見ることができます。各コンテンツの詳細はDVDの項をご覧ください。次回のテレビシリーズは2009年。

DVD

テレビ放送されたものと同じ内容のDVD。ビジュアル的にも楽しめるエンターテインメントです。

mtt on music(チャイコフスキー:交響曲第4番)

クラシック音楽は人間の営みに直結した普遍的なものであるということを、チャイコフスキーの交響曲を単純なものに還元するという手法で伝えています。彼らの活動や音楽づくりも大公開。

ベートーヴェン:交響曲第3番<英雄>

ソナタ形式の交響曲というスタイルを取り上げ、どういう要素で音楽が作られているのか、それ以前の音楽とどう違い、それ以後の作曲家にどういう影響を与えたのかについて、ベートーヴェンの足跡をたどりつつ紹介。

ストラヴィンスキー:春の祭典

あの革新的な音楽は、ストラヴィンスキーがどういう教育と環境を経て、何を意図して作り上げたのか、その音楽のどこが革新的なのか?ストラヴィンスキー本人に大きな影響を受けたMTTがエネルギッシュに語ります。

コープランドとアメリカンサウンド

アメリカのクラシック音楽を確立したコープランド。そのアメリカンサウンド探求の道のりをたどるとともに、アメリカらしさとは何かを考えさせる内容。ティルソン・トーマスの問題意識「アメリカンサウンド」と「アーティストの社会に対する責任」を網羅。

The MTT Files(ラジオ)

ティルソン・トーマス60年の音楽人生を大放出した1時間のラジオ番組が8回のシリーズ。KEEPING SCOREプロジェクトのラインナップの中で、このラジオ版は、ティルソン・トーマスのパーソナルな経験にスポットライトをあてたもの。MTTが交流した偉大なアーティストとの思い出をはじめ、アメリカ音楽、教育など彼の関心領域について音楽を紹介しながら大いに語っています。これを聴けば、MTTが今の音楽にどうたどり着いたのかをうかがい知ることができます。

こちらからお聴きいただけます。

【関連記事】
The MTT Files が Peabody Award 受賞

各回の内容とレビュー

第1回 それは音楽と呼べるか?
音楽とノイズの境目は何か?ゲストは、現代音楽の作曲家Steven Mackey。

第2回 アメリカを音楽で表すと? その1
コープランド以前のアメリカ音楽と彼の初期のアヴァンギャルド作品を取り上げる。

第3回 アメリカを音楽で表すと? その2
コープランドのモダニズムからポピュリズムへの変遷とその背景について。ニューワールド交響楽団のリハーサルも交え取り上げる。

第4回 ストラヴィンスキーの著作権ブルー
ストラヴィンスキーが「火の鳥」で大成功したにもかかわらず、著作権が保護されていなかったためにお金に苦労した話。「火の鳥」の自動演奏楽器版を取り上げる。

第5回 最後のヴィルトゥオーゾ
ヤッシャ・ハイフェッツを題材に超絶技巧とは何か、どうしたら会得できるのかを探る。彼と同じ楽器を現在使用している、サンフランシスコ交響楽団コンマスのAlexander Barantschikと共に。

第6回 フロイトとバレエ
舞踊家ナタリア・マカローヴァをゲストに、心理的なものを音楽がどう取り込んだかについて、「ジゼル」とそれ以後を対比させて取り上げる。

第7回 演奏するのはブーレーズ、でも聴くのはジェームズ・ブラウン!
現代音楽に傾倒していた大学時代に、ジェームズ・ブラウンを聴いて、音楽観が変わったというMTTの彼へのインタビューを中心に。

第8回 五世代を越えて
MTTがピアノを師事したジョン・クラウンは、遡っていくとローゼンタール、リスト、ツェルニー、ベートーヴェンへと続くことから、教師が技術面などだけでなく、音楽的な思想を次の世代へ受け継がせるにはどうすべきかを探る。

ウェブ版

テレビシリーズと連動したウェブサイト。作曲家に歴史からアプローチするコーナーと音楽面からアプローチするコーナーで構成。音楽面では曲を聴きながらスコアを見ることができ、テレビシリーズで取り上げた要素の表示や解説もあります。より詳しく多角的に作品に迫った力作。ぜひご覧ください。

ウェブ版はこちら

教育プログラム

彼らは従来から地域の教育プログラムに力を入れてきましたが、このKEEPING SCOREプロジェクトの一環として2006年に、teaching through music、すなわち主要教科(国語、算数、理科、社会など)の授業の手段として音楽を取り入れるという教育プログラムを開始しました。

↓活動を紹介するプロモーション・ビデオ

このプログラムに関するサンフランシスコ交響楽団のウェブサイトはこちら

今後の予定

次のテレビシリーズは2009年を予定。取り上げるのは、ショスタコーヴィチ:交響曲第5番、ベルリオーズ:幻想交響曲/レリオ、アイヴズの3つ。

この3本、どれも楽しみですが、やはり真打はアイヴズでしょう。ティルソン・トーマスのアイヴズは、あまりに極めすぎていて、もう誰も何も言えない。拝聴するしかないというくらいの域に達していると思います。サンフランシスコ交響楽団のサウンドは、アイヴズのために作られたのではないかしらというくらいです。

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シーズン2に関する記事~詳しくはトップページへ~

  • KEEPING SCORE season Ⅱ はこうなる!
    (ラインナップを紹介した過去の記事)