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KDFCでマーラー5番を聴いた
ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団の2009年のマーラー・フェスティバル。現地で聴くことができなかった最後のプログラムをKDFCの放送で聴きました。プログラムは、
Scelsi :Hymnos
マーラー:交響曲第5番
演奏を聴いて思ったのは、これはScelsi のHymnos とマーラー4楽章のアダージェットを並べて提示したかったのだろうということ。
1963年の作品Hymnosの2つのオーケストラとオルガンによるないまぜになった表現と、1904年の作品アダージェットから受けるものが同根であることをリアルに感じさせていたと思います。
アダージェットは歌い上げの魅力やほとばしるエネルギーで押す演奏とも、ヒーリング・クラシックスの代名詞的存在としてのこの曲とも対極。ベルクの音楽みたいに生のものを見てしまった感じ、瀬戸際スレスレの危うい感じがしました(特に曲の後半)。PMFのときにもやっていた最後の音を極限まで細く引っ張るアイディアは、このコンテクストにおいてより整合性・説得性があるのだと思います。
その他の楽章については、2楽章の終わり方や3楽章前半の自然に流れる感じなどが印象的。パーツの作り込みも演奏もケチつけるようなものではなかったけれど、それらが一つの曲として有機的に統合されていたかという点で俯瞰して見ると、崩壊寸前もしくは少し崩壊(?)CDの地点を一つの統合点だったとすると、次の統合点にもっていくまでの道のりは長い。MTTって、よくテレビの実験シーンで
*危険ですから絶対にまねをしないでください
って画面に表示が出るけど、そういう感じ。
しかも本人は「いやー、つい筆がすべっちゃって、、」キャラだから、世話ないのである。
今回もかなりstop をやっていましたが、これはぜひ一度皆に意図を話してほしい。ストーリーテリングのときにはpauseがあるものだと語っているのを読んだことがありますが、そのpauseにマーラーでかなり間を置いているstopも含まれるのかは不明だから。
この交響曲第5番は当初、KEEPING SCOREマーラー編に全曲を収録するために撮影をするとしていましたが、当日撮影はなかったという情報があり、改めて機会を設けるのか、曲目変更なのかはわかりません。
いずれにせよ、せっかくのリニアPCMなのだから、望みうる最高の演奏を収録していただきたい(すでにKEEPING SCOREはボツの山の上に成り立っている。この景気後退期にあってもMTTに再度のチャンスを与えるサンフランシスコの人たちは寛大だ)。
まだまだこの先も一筋縄では行かなそうなMTTのマーラー探求の道のり。本人には大変御苦労なことではありますが、自ら大変な道に踏み入ったわけですから、ぜひ乗り越えて次のステージへ!
(2009.10.14)