Adventures in Music 20周年
サンフランシスコ交響楽団の教育プログラムの一つであるAdventures in Music(AIM)が20周年ということで、活動の紹介と成果の報告が発表されました。
Adventures in Musicのウェブサイト(動画もこちら)
プレス発表
この活動は、サンフランシスコ市の全公立小学校(+一部の私立)1〜5年生を対象に無料で提供されています。91の学校で年間1000人もの先生がプログラムに参加、学校でのコンサートだけでも年間1000回以上やっているそうです。
内容の核は、AIMのミュージシャンによるアンサンブルとシンフォニーが開発したプログラムを先生が用いる2点にあります。ミュージシャンや先生は、このプログラムのための研修をシンフォニーから受けた人たちです。
この活動があることで、サンフランシスコ交響楽団はコミュニティでの存在を確たるものにできたとのこと。
ウォールストリートジャーナル紙にも「業界がめざすべき水準はここだ」と評されたという、社会の役に立っているオーケストラの世界をぜひご覧ください。
活動紹介の動画
ウェブに6分程度の活動紹介の動画がアップされました。
今までAdventures in Musicは、アンサンブルなど様々な音楽体験を提供しているとあったのですが、実際にどんなことをしているのかがイマイチわかりませんでした。
今回動画を見ることで、彼らの言うアンサンブルというのが、クラシック音楽だけではない、いろいろなジャンルのミュージシャンと近い距離で音楽のコミュニケーションをすることだということがわかりました。
毎年、ジャズ、アフロ・キューバ、西洋クラシック音楽、中国伝統音楽の4つのアンサンブル・コンサートを体験できるようプログラミングされており、最後にデイビスホールのサンフランシスコ交響楽団のコンサートでクライマックスを迎えるそうです。
彼らはこのプログラムを開始するときに、サンフランシスコの多民族構成からこうした多様性を生かしたものにプログラミングしたとのこと。
多くのオーケストラが教育プログラムをやっていますが、オーケストラだけを素材にしていないプログラムは、サンフランシスコが誇る点だそうです。
教材の公開
動画では、彼らが開発した教育プログラム用のCD、テキスト、ツールなどを見ることができます。
どれもデザインが楽しくて、元気が出るような感じがするものです。彼らが学校訪問してアンサンブルなどをやるときの会場飾りつけも同じように工夫してあって楽しい。
活動への評価の公表
学校の先生、生徒、ミュージシャン500人以上にインタビューし、活動についてフィードバックしてもらったものをまとめた結果も公表しています。
上場企業のCSR報告書も顔負け?なくらい、アカウンタビリティを徹底しています。
実際に活動を見る機会の提供
今回、メディア向けに実際に活動を見る機会を提供します。2月〜5月の間、小学校でのアンサンブルのセッション、デイビスホールでのAIMの一部であるシンフォニーのコンサート、保護者も参加する子どもたちが活動成果を披露する催しなどを公開します。
シンフォニーの教育プログラム担当者、経営幹部、ミュージシャン、学校の先生、プログラムを共同で実施しているサンフランシスコの他の機関の方などもインタビューに応じるそうです。
ミュージシャンの雇用
今回の発表で私が一番注目したことは、AIMに参加しているミュージシャンがサンフランシスコ交響楽団のメンバーだけではないという点です。クラシックでもシンフォニー以外のミュージシャンがいるし、クラシック以外のジャンルのミュージシャンも多数。
週に4〜5日も朝早くから学校に出かけることは、ミュージシャンにとって大変らしいのですが、彼らはAIMに参加することで、定期的な収入のベースが得られる上に、子どもたちにどう話したらいいか、どういう展開がいいのか考えることで、得るものが非常に多いそうです。そしてコミュニティにミュージシャンの居場所があるということに喜びを感じるそうです。
シンフォニーが企画と資金集めをして、プログラムを地域に提供することで、多くのミュージシャンの雇用が生まれるなんてすごいと私は思います。
ホットライン!
もう一つ私の目に留まったのは、AIMのホットラインがあると言う点。彼らは学校の先生にプログラムを実施してもらうための研修をやっていますが、実際にやっていてわからないことがあったら、すぐに電話で聞けるのです。
そこまでしてこの活動がうまく続くのだと思いました。
(2008.1.18)