A Celebration of Leonard Bernstein
2008年9月にカーネギーホールのシーズン・オープニングを飾ったマイケル・ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団による、バーンスタインの生誕90年を記念した、オール・バーンスタイン・プログラムのガラ・コンサートのDVDが一般発売されました。
ただのガラ・コンサートと侮るなかれ
もちろんヨーヨー・マ、ドーン・アップショウ、トーマス・ハンプソンら豪華なゲスト陣は、それぞれが持ち味を発揮していて素晴らしい。
しかしそれらを貫いているのは、「極限まで突き詰めた非常に厳しい音楽だけどエンターテインメントでもある」という、世にも稀なMTTワールド。
マーラーのCDを聴き、ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団コンビはどんなものなのか?と疑問に思った方に特におすすめ。MTTを筆頭とするマルチ・タレントの集結ぶりは、
「こちら、どういう団体の方々ですか?」
と思わず聞きたくなる風情をかもしています。コンテンポラリーにおけるサウンドや世界観はもちろん、ジャズやラテンをベースにした部分も非常に成熟した大人の音楽です。
バーンスタインは日本では指揮者のとしてのイメージが強く、作曲家としての業績は一部の作品を除いてはあまり知られていませんが、これを見ると作曲家として残したものの大きさに認識を新たにするばかり。
聴きどころ
聴きどころは、前半のウェストサイド・ストーリーからシンフォニック・ダンスとA Quiet Place(抜粋)の聴き比べだと思います。コンサートでは、この前半があまりに迫真に迫っていたので「どこがガラ・コンサート?」という雰囲気が漂い、後半が始まったときにティルソン・トーマスが「これからはガラ・パートに移ります」とわざわざアナウンスしたくらい。
後半は、曲ごとに最初にソリストとティルソン・トーマスのやりとりの短い映像が挿入されているのですが、ちょっとした曲についてのヒントみたいな話で、サンフランシスコ交響楽団のコンサートでのトークのイメージをつかんでいただけると思います。
MTTのショウマンぶり
MTT持ち前のショウマンシップも余すところなく披露。私が感心したのは、シンフォニック・ダンスがコンサートの1曲目だったにもかかわらず、お客さんに「マンボ!」を言わせたこと。後半とかアンコールならともかく、これはクラシック音楽のアーティストにはなかなかできない。しかも着飾ったお客さんが皆大きな声で「マンボ!」と応え、それに対してさらに振り返って親指立てて「グ〜」をやるMTT。このノリで音楽が極度の練り上げ調かつ、全体がとにかくクールに決まっているところがMTTなのだと思います。
ティルソン・トーマスは、最後の Ya Got Me でも本領発揮していて、カウントで曲を始めたり、自身も歌い(踊りは自粛)、かけ声を入れ、ヨーヨー・マのソロをクローズアップさせるためにひざまずいたり、挙句チェロにマイク向けていました(スイッチはoff)。
バーンスタイン作品の多彩さ、作曲技法の高度さを再認識するとともに、世間一般のクラシック音楽におけるエンターテインメント的アプローチとは一線を画するエンターテインメント路線とはいかなるものなのか?一見の価値ありです。
*ティルソン・トーマスのバーンスタイン音楽に対する解釈に関しては、ニューヨークタイムズのレビューが核心を伝えていますので、そちらをご覧ください。
DVDは、Avieルートで日本の小売店にも並ぶ模様。良かった。
曲目の詳細やコンサートの様子はこちら
バーンスタイン・フェスティバルのオープニング・ガラ
(2009.1.15)