資金調達今昔
お盆で夫の実家に行ったら、本棚に25年くらい前の彼が学生時代に買ったレコ芸別冊「世界のオーケストラ」という本があり、中をパラパラ見ていたら資金調達について面白い記述がありました。
アメリカのオーケストラの音楽監督の一番重要な仕事は資金集めで、地元の社交界に入ってどれだけお金を集められるか、とりわけご夫人方にどれだけ気に入られるかが勝負だ。
というような内容でした。今も地元の社交界というのは非常に重要で、そこでのコミュニケーション能力が問われる点は同じです。
でも25年前と今とで大きく違うのは、現在は資金調達が組織力や提案力で決まるということ。そして資金の出し手も大きな額を動かす人たちはファンドを組成しているということ。
これは社会起業家(ソーシャルアントレプレナー)とか社会的事業に投資する投資家の登場などの流れを受けたものです。音楽も他の社会問題と横一線に並んで、社会的問題解決の必要性とか、社会に対する効果などの点から企画が審査されて資金を獲得してくる時代なのです。現にサンフランシスコ交響楽団のKEEPING SCOREプロジェクトに大口資金を提供したのもこのようなフィランソロピー・ファンドでした。
組織力という点では、例えばサンフランシスコ交響楽団のDevelopment部門にはスタッフが24人もいますが、彼らはファンドなどの機関投資家、行政、企業、個人などの対象別、仕組みもの(信託などを用いた運用商品がある)を企画する担当、支援者をフォローする人、キャンペーンなどの企画担当、コーディネーター、リサーチなど細かく担当がわかれていて知恵と提案力プラス気くばりでがんばっています。
そして組織力にプラスして忘れてはならないのは、社会にメッセージを発するリーダー。ティルソン・トーマスはサンフランシスコ交響楽団とニュー・ワールド交響楽団の二団体でファンドレイジングを成功させていますが、これは彼が音楽の社会に対する効果を「論理的に語れる」能力の持ち主であることが非常に大きいと思います。MTTの語りのパワーと、例えばアル・ゴアの「不都合な真実」での語りなどを比較しても、遜色ないですから。
ともかくこの25年の間に、非営利組織の経営という分野は大きく発展したということを改めて実感したお盆でした。
(2007.8.14)