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総括:ニュー・ワールド交響楽団のオープニング週間を体験して
ニュー・ワールド交響楽団(ニュー・ワールド・シンフォニー)の新キャンパス“ニュー・ワールド・センター”のオープニング週間を体験し、考えたことのまとめです。
建物について
とにかくゲーリーの建物がアートで素晴らしい。夢をそのまま実現させたような建物で、こういうものを建ててしまう人が世の中にはいるんだと驚きました。今回、ゲーリーとティルソン・トーマスは徹底的にディスカッションを重ねていったそうですが、ゲーリーも大変だったと思います。オープニング・セレモニーのときにゲーリーが「マイケルと仕事ができて楽しかった」と言っていたので、めでたしめでたし。
フェローたちが学ぶ環境は、最高に恵まれています。この恵まれた環境をどう生かすか、チャンスを与えられた彼らには責任も伴うと思うので、ぜひがんばってクラシック音楽の未来を切り拓いていってほしい。
コンサート体験について
新しいコンサートホールを生かした様々な試みはとても面白かったです。どれも期待以上のものでした。ティルソン・トーマスが「テスト・ドライブ」と言っていますが、まさにこれからにかかっている。オープニングに披露したものはどれも時間とお金をかけていたでしょうから、普段にどれだけのものを出していけるかに真価が問われる。今後に期待します。
新キャンパスは街の中心にある公園の中にありますが、市民が集うスペースにするというコンセプトを実現させる上で、壁面のプロジェクションとウォールキャストの価値は非常に大きい。コンサート開始前の時間から深夜までプロジェクションに映し出されるデザインのアニメーションは、とても目立つ上にアート。建物のシンボルとなっていました。またウォールキャストは、音、映像、コンテンツの三拍子が揃い、ティルソン・トーマスがマイアミでもサンフランシスコでもやってきたことの集大成であり、悲願達成だったと思います。
都市との関係について
マイアミは今、文化で都市の魅力をあげるべく盛り上がっています。ArtBaselというアートショーの盛況、そして市民が集う場であり観光の目玉スポットにもなるニュー・ワールド・センター。今後、美術館を集積する計画なども進行中。
都市開発や観光の中心となる存在がオーケストラであるというのは、かつてないケース。そして建物とコンテンツの両方が高い次元でイノベーティブである点に注目だと思います。
今回のプロジェクトは官民共同でしたが、民間主導であることの利点は、無難に落ち着くことなくトンガッタものを造れること。
ニュー・ワールド交響楽団に関して言えば、強力なプロデューサー(ティルソン・トーマス)がいること、プロのオーケストラと違って組合もない若者たちの集団であることが、こうしたチャレンジを可能にする特殊要因としてあります。
オープニング週間を体験した市民からは、自分たちのコミュニティがこういうものを持てるなんて!MTTとニュー・ワールドがマイアミにあって良かったという声が上がっていました(MTTはサンフランシスコでも同じことを言われている)。
MTTのこと
オープニング週間は、毎日が違うプログラムであり、それぞれに初めての試みが満載だったため、事故のひとつも起きずにやり遂げたことだけでもすごいと思います。そして今までにないコンサート体験を提供するという構想を見事に実現させていたと思います。
やはり取り上げる曲数が多かったので、サンフランシスコでやっているような練り上げ調ではありませんでした。ティルソン・トーマスは相手と状況に応じて、目指す仕上がりレベルを変えるんだということがよくわかりました。練り上げ調でないときのMTTは、わりと快調なテンポで素直な演奏をするので、アイディアに「おおー」となる楽しさがないけれど、演奏した全ての曲のボトムのレベルを一定以上に揃えた手腕はさすが。
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今後、ニュー・ワールド・シンフォニーがどんなコンテンツを出してくるか期待するとともに、本当に都市を牽引する存在になるか、ウォッチしていきたいと思います。
(2011.2.2)