KEEPING SCORE

第8回 五世代を越えて

今回は、ティルソン・トーマスが南カリフォルニア大学で師事したピアニストのジョン・クラウンが、ローゼンタール→リスト→ツェルニー→ベートーヴェンという系譜にあることから、教師がどのように音楽的な思想を弟子に伝えていくかという話です。

私はティルソン・トーマスのピアノは、音がきれいだとは思いませんが、演奏するときに頭と上半身の軸がぶれないところを見ると、きちんとしたピアノの教育を受けたのだということを感じます。

番組では、ティルソン・トーマスがジョン・クラウンから学んだことの話から始まり、そこからその師に順番にさかのぼりながら、その音楽や演奏とともに、弟子が師匠について述べている資料なども合わせて、どのような音楽的思想が伝わっていったかを探っています。

ティルソン・トーマスの話によると、音楽家は多くの観客とコミュニケーションをとる仕事だけれども、そのための時間というのは、一人で作品と向き合う孤独な作業の連続である。そういうときによりどころとなるのは、師から学んだことと受け継がれてきたその背景にあるものだと思うそうです。だから自分が人に教えるときも、その人が同じように一人で作品と向き合ったときに、よりどころとなれるようなものをなるべく伝えるようにしているとのこと。

未来に向けてどう音楽がつながっていくかは、自分たちが受け継いできたものをどう伝えるかにかかっているという言葉で番組は締めくくられています。

(2007.6.1)