第2回 アメリカを音楽で表すと? その1
2回に渡って音楽におけるアメリカらしさとは何か、コープランドを題材に探ります。テレビシリーズでも取り上げたコープランド。ティルソン・トーマス(MTT)にとって、この作曲家から受けた影響と作品の存在がいかに大きいかが窺われます。
ここでのMTTの問題意識は、アメリカにとってクラシック音楽は、ヨーロッパから輸入されたもので、これらの流入してきたものとアメリカで発展したクラシック音楽があるということ。そして後者はまだ100年くらいの歴史しかないのだが、これを築きあげるのに大きく貢献したのがコープランドだということ。そしてMTTがコープランドがそれまでのアメリカの作曲家と違うと考える理由は、彼の音楽がアメリカらしさを表現したものだから。ではどういう点がアメリカなのか、音楽を聴いて考えてみようというもの。
第1回目は、コープランド以前のアメリカのクラシック音楽がどうであったかということと、コープランドが前衛音楽に傾倒した初期の作品にスポットをあてています。
コープランドが触れたユダヤやアフリカ系などの様々な音楽とはどういうものだったのか、そういういろいろなものが混ざり合ったアメリカで、どう独自の音楽を形成していったのか。たくさんの例を聴いたり、MTTがピアノで表現して見せたり、(地声で)歌って見せたりしながら番組は進みます。
ハイライトは女声コーラス曲「不道徳」のリハーサルと全曲演奏。少女合唱の皆さんに、MTTがユダヤのイントネーションを伝授しているシーンが面白いです。
エピソードもいろいろ披露していて、彼が中学のオーケストラでオーボエを吹いていたとか、10代の頃、家で前衛的なピアノ曲ばかり弾いていたら、「そんな音楽誰が聴くんだ!」と親に言われたとか、盛りだくさん。
言わば、コープランドを題材にアメリカの歴史を考えるという内容で、興味深いです。
(2007.4.11)