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毎日演奏が変わるサンフランシスコ交響楽団のコンサート
ヨーヨー・マをゲストにヒンデミットのチェロ協奏曲、ベートーヴェンのレオノーレ序曲第3番、ブラームスの交響曲第1番というプログラムのティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団のコンサート2日目。
初日の演奏は、2日目以降に期待というものでした。さて、本日の演奏は?
プレトーク
コンサート開始1時間前から30分間のプレトークにも行きました。担当はAlexandra Amati-Camperi氏。特に興味を引くことは言っていませんでした。2日ともに同じ内容。ジョークも同じで、同じようにウケていました。1楽章のハ短調と4楽章のハ長調をつなげて聴かせ、これがこの曲のリーダーズ・ダイジェストだというのと、今日のプログラムはこってこてのチョコレート・ケーキみたいだというもの。
レオノーレ序曲第3番
最初にマイクを持った人が出てきたので、何かアクシデント?とヒヤっとしたら、「本日のレオノーレ序曲第3番は録音します」とのこと。携帯電話の電源切ったかダブル・チェック(!)するよう言っていました。
昨日のコンサートで演奏した3曲のうち、レオノーレが一番完成度が高いように感じました。曲が短いせいかと思っていましたが、やはり理由があった。ベートーヴェンは、昨年秋に7番の交響曲を録音しています。それに今回のこの曲、後は何をカップリングするのでしょうか?今シーズン、他に演奏が予定されているのは9番。100周年シーズンの最後がその曲だから、記念にもなるから第九でしょうか。
登場するMTT。今日も指揮棒は使わず。第一音が鳴った瞬間から、
全然違う
気合と集中力が昨日とは比べものにならないくらい違う。マイケル・ティルソン・トーマスという人の、録音に向けて上げてくる完成度にはただならぬものがあります。
もうマーラーのときみたいな凝った録音機材ではないのがちょっと悲しいけれど、MTT/SFSワールド満載の演奏に録れていると思います。
ヒンデミットのチェロ協奏曲
今日もマは楽譜を見ていましたし、やはり途中で空調の風が吹いてマの譜面がめくれ、トーマスはマの譜面を押さえながら指揮していましたが、今日の演奏はそんなことを通り越して、大変素晴らしいものでした。
オーケストラが非常に決まっていたし、ノリノリでした。この曲演奏したら楽しいだろうなと思いました。
マもオーケストラの調子の良さに勝るとも劣らない演奏を聴かせてくれました。
曲が終わったとき、トーマスもとてもうれしそうで、指揮台の上で拍手しながら足を踏み鳴らしていました(昨日と態度が違う。やはり昨日は音楽が語るレベルに達していなかったと思う)。
ブラームスの交響曲第1番
コンサートの前半がうまく行ったので、今日はこのまま調子よく進むんだろうなと予測していましたが、その通りでした。
微に入り細に入り作り込むというよりもストレートに、彼らの今が伝わってくる演奏だったと思います。聴いていて感じるのは、やはりヨーロッパのオーケストラとは響きも志向もずいぶん違って、こういう演奏が出てくるのは面白いということ。
個人技では、コンサートマスターのバランチックのソロが立ち昇ってくる音色が光っていました。楽器がどんどん鳴るようになって、しかも限界なく良くなっているように感じます。
もう一人光っていたのは、ティンパニのデイブ。最後のオーケストラの休符にティンパニだけが入るところが決まっていました。彼はビリー・ザ・キッドでも活躍したので、シーズン始めに一歩リード。
同じプログラムのコンサートに2日続けて行きましたが、演奏はずいぶん違いました。初日に比べて良くなったという違いも大きいですが、MTTはノリが毎回違う。彼の場合、練り上げた表現ができて、かつ、それがその場のノリの部分とうまく噛み合ったときによい演奏になるのですが、いつそれが功を奏するかは予測が難しい。だから私は、ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団コンビのコンサートに1回だけ行くのは、リスキーだと思っています。
パーセプション・ギャップ
今日コンサート・ホールに向かう途中、市庁舎の広場でメキシカンのイベントをやっていました。
メキシカンなミュージシャンが歌と演奏を行っていたのですが、
その場にいるのがいたたまれないほど、音量がでかい。
私は今年5月にティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団のウィーン公演に行き、マーラー6番の演奏を聴いたとき、せっかくここまで音楽を積み上げてきて、どうして最後の最後にトゥー・マッチな大音量になっちゃうんだろう。デイビスよりもキャパシティが小さくて古いウィーンのホールで、デイビスと同じように金管が吹いたら(どんなに演奏が良くても)うるさいって、どうしてわからないのだろう?
と不思議でしょうがなかったのですが、今日のメキシカンを聴いて、ひょっとして、アメリカって大音量の基準が違うのではないかと思い当りました。
これも一種のパーセプション・ギャップ?
ちなみに、今回のベートーヴェン、ブラームス、ヒンデミットはちょうど良い音量でした。2日ともオーケストラ・フロアで聴きましたが、観客は演奏中静かでした。やればできる。
一日目のレビューはこちら
ヨーヨー・マのヒンデミット協奏曲とブラームスの1番
(2011.9.15)