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客席の空気

ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団のコンサートは、客席の空気が違うと書きました。

どう違うかというと、お客さんの演奏への惹き込まれ度合いが、普通のコンサートが5だとすると、8くらいあるということ。理由は、

観客との信頼関係がある

からだと思います。KEEPING SCORE では、ティルソン・トーマス(MTT)が音楽監督になってから最初の4〜5年間に、これを作り上げるために意識的に努力をした様子が伺えます。

この信頼関係ということを考える際にポイントとなるのは、彼らのビジネスモデルです。彼らは1回毎のイベントとしてコンサートを提供するのではなく、継続的にデイビスホールにオーケストラを聴きに行くということを生活の一部にしてもらうことを目標にビジネスを組み立てています。

だから定期会員(subscriber)が占める割合が高いし、継続的な関係だから信頼関係が重要になります。

そして、信頼関係とは何かというと、サンフランシスコ交響楽団のコンサートに行けば、何かインスピレーションが得られる、自分の感性が刺激されるものが得られて面白いという思いをもってお客さんが演奏を聴いてくれているということだと私は思っています。

ここがティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団のコンサートのユニークなところです。一般的な「感動」とか「興奮」といった直接情に訴えかけるものよりもむしろ、演奏はもちろん、プログラミングやプレゼンテーションの仕方も含めたトータルで、コンサートから何か自分の感性が触発されて、ひらめきがあるような感じが得られるのです。

昨今(特に国内のコンサートで)、顧客満足度を上げるためなのかもしれませんが、感動を呼ぶ「熱い演奏」が多いような気がしていた私は、こういうアプローチのコンサートもあったということに、目から鱗でした。

新鮮です。ぜひ皆さんもデイビスホールでお試しを。

(2007.1.17)

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