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地元密着型オーケストラのパブリシティ

今日は、サンフランシスコの地元紙である「サンフランシスコ・クロニカル」におけるサンフランシスコ交響楽団の記事を通して、地元密着型オーケストラのパブリシティを見てみたいと思います。

まず、コンサートやアーティストの情報とそのレビューがあるのは、日本の新聞におけるオーケストラの扱いと同じです。違っていて注目すべきは、それ以上のローカルネタにあふれている点です。どんな記事があったかというと、

新しいオーケストラメンバーの紹介、退職するメンバーごくろうさんの記事から始まり、組合交渉が決裂したとか、ようやく妥結したとか、オーケストラの誰それががんの闘病から復帰したとか、元ボードメンバーの誰それが亡くなったとか、マネジメントの人事異動の話、コンサートの演奏途中で火災報知機が誤作動したとか、株価が下落したせいでいくら赤字になったとか、今期はどうする計画かとか。

こんなにいろいろ話題になってしまうというか、してしまうところにびっくりです。さすが地元密着型オーケストラのサンフランシスコ交響楽団。

過去のできごとの中で面白かったものは、「コンダクター・スワッピング」。同じ日にサロネンがサンフランシスコ交響楽団を指揮し、MTTがLAフィルを指揮するという企画をやったそうです。サンフランシスコをあげてサロネン大歓迎で盛り上がったそう。聴きたかった。

昨年初めて中国ツアーをやったときのことは、連日詳しく報道されていました。ティルソン・トーマスが上海の音楽院で指揮の公開レッスンをやったそうなのですが、最後彼の気迫に通訳の人が口を挟むべきではないと判断し、静まりかえった中で語ったそうです。コンサートの後は、お客さんと質疑応答などのコミュニケーションの時間もあったそう。(MTTは中国でもコープランドをやり、Making Musicの持論を展開したらしい。)

日本のメディアでは、コンサート情報が中心を占めており、アーティスト側もこうしたメディアか大量のちらしなどでコンサート情報を発信することに目がいっているように思います。サンフランシスコ交響楽団が地元紙にコンサート情報だけでなく、いろいろな面から話題を提供していることが、パブリシティとオーケストラを身近に感じてもらうことの2つの役割を果たしていることは、とても参考になると思います。

新聞記事を読み、あらためてこれだけ身近な存在だと、オペラグラス持参でコンサートに来ちゃうお客さんがいるのも納得だと思いました。

(2007.7.25)