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二度あることは三度ある。ムーティ・リターンズはおあずけ
一昨日は雪嵐で内田光子の弾き振りが延期になり、昨日は大雪でクリーブランド管弦楽団の公演がキャンセルになったシカゴ交響楽団。今日は天気も晴れたので、無事コンサートが開かれることを祈っていたところ、夕方になってまたシカゴ響からEメール。
今日明日(2/3,4)のコンサートの指揮者とプログラムを変更します
とある。何とムーティが午前中のリハーサル時に倒れて病院へ運ばれていました。そのため、急遽指揮者がレナード・スラトキンに変更になり、コンサート前半のプログラムが(延期になった)内田光子の弾き振りでモーツァルトのピアノ協奏曲第21番に変更されました(当初は同じくミツコのピアノでシューマンのピアノ協奏曲の予定だった)。
やはり二度あることは三度ある。しかもムーティは、秋の就任披露週間の途中で胃の痛みを訴えてミラノに帰ってしまい、就任披露が尻切れトンボになってしまったこともあり、この2月の登場は「ムーティ・リターンズ」と銘打って盛大にプロモーションがなされていたのでした。期待が高まっていたときに、こんなことが起きるなんて。
シンフォニー・センターはムーティ一色だった。
という訳で、コンサートの最初にプレジデントのデボラ・ルター氏が挨拶。ムーティは幸い大事に至らなかったこと、ショルティ指揮者コンクールのためにシカゴに滞在していたスラトキンが代わりを引き受けてくれたこと、今日来てくれて感謝しますと言っていました。
内田光子の弾き振り
結局、ミツコのモーツァルトの弾き振りを聴くことができたので、その点ではラッキーでした。
すごく隅々まで神経が行き届いた演奏で、とても楽しく聴けました。オーケストラはrefineという言葉がぴったりで、響きがまとまっていてオーケストラ間のバランスもピアノとのバランスも素晴らしかったです。
ミツコはかなり細かいニュアンスをオーケストラに指示していました。
カデンツァはオリジナルのもの。1音だけ意外な音を混ぜていましたが、後は正統的な音楽づくりでした。
衣装はいつものイッセイ・ミヤケなのか、ビビッドな緑のタンクトップにブルーの幅広パンツ、薄い黄色のオーガンジーのはおりものというイマイチよくわからない組み合わせでしたが、とてもエネルギッシュで素敵でした。お客さんの反応も非常に良かった。
ショスタコーヴィチの交響曲第5番
私はスラトキンを初めて生で聴いたのですが、勝手なイメージで彼は大男だとずっと思っていたのに違っていて意外でした。ショスタコーヴィチの5番は十八番みたいで暗譜。
リハーサルはしたのでしょうか?要点だけ「このテンポで」とか「ここはこうして」みたいなことを確認するくらいは時間があったかもしれません。
今日の午前中までムーティと準備してきただけあって、アンサンブルはばっちり出来上がっていました。弦はつやがあって、小さい音までとてもきれいでした。
スラトキンの棒はきっぱりしていて、無理なことをしないのでどれも納得できる内容。要所をきっちり押さえているし、盛り上げてもくる。
だから強奏の部分は、とても大きい音でした。ソ連的重戦車のイメージで、他ではあまり聴けないくらい鳴っていました。最後のティンパニも底が抜けるかと思うような音。ムーティだったら、同じように大きく鳴らすのか?そこが知りたい。
曲が終わってソリストを立たせたとき、クレヴェンジャーを真っ先に立たせていました。一楽章の終わり近くのフルートとのかけ合いのところでへろへろだったのに最初に立たせたところを見ると、敬意を払う暗黙の掟でもあるのかな?と思いました。私の耳には、デュフォーが抜きん出てうまく聴こえたけれど(立たせられた順番は十人目くらいだった)。
ムーティは土曜日のコンサートには予定通り登場することになっているので、今度こそムーティ・リターンズになることを祈っています。
(2011.2.3)
ムーティの話
オーケストラの皆さんはさぞ驚いたことでしょう
倒れたときの様子について(シカゴ・トリビューン)
ショスタコーヴィチの3楽章を振っていたとき、指揮台で気を失い、譜面台にあごをぶつけたのだそう。複雑骨折で手術することに。
ニューヨーク・タイムズ
続報(みんな心配)
シカゴ・トリビューン
結局、2月のシカゴ響への出演は全部取りやめ(お大事に)
シカゴ・トリビューン