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レストランで食事中のオーケストラ団員に話しかけるか?
最近、サンフランシスコ交響楽団のコンサートに対する地元のレビューを読んでいて目が止まったのは、日頃からティルソン・トーマスのベートーヴェンの解釈はいかがなものかと思っていた筆者の人が、ある日デイビスホール近くのレストランに入ったところ、オーケストラ団員が一人で食事していたので話しかけ、
ちょっと、MTTのあの解釈はどうなのよ?
と言ったと書いていたこと。その団員は「あなたの言っていること、よくわかります」と答えたらしいが。
そういえば、昨年マーラーの千人を聴きに行った帰り、最寄りのBARTの駅(ダウンタウンでは地下を走っている公共交通機関)で、電車が来るまでの間(夜は運行本数が少ないので、待ち時間が長い)、ホームにいたSFSのマンドリン奏者のおっちゃんに千人帰りの人たちが話しかけ、またたく間に人垣ができ、しかもマンドリンはちょうど出番が少なく本番中つぶさに周りを観察していたとあって、皆しばしおっちゃんの話に耳を傾けたなんてこともありました。
さらには昨年、サンフランシスコ交響楽団が Google でトークショーをやったとき、
MTTに質問のある人は並んでください!
と司会者が言ったら、我こそはギークであるみたいな風情のよれ~っとしたTシャツ着たお兄さんの行列がズラーっとでき、
あなたが何年にやった何たらという曲の解釈だけど、私はかくかくしかじか考えるのだが、それに対してあなたはこれこれで、そこんとこどう考えているのか、意見を聞きたい。
みたいな発言が出るわ出るわ。私はこれを見たとき、その聴いていないと聞けない内容なのと超各論なのにあ然。
この件で思い出すのは、一昨年東京オペラの森でのロバート・カーセンの講演会。質問ある人は書いて出してくれと言うので、私は2004年のザルツブルグ音楽祭の「ばらの騎士」で、最後ゾフィーとオクタヴィアンの二重唱の2コーラス目で、彼が歌手の後ろのセットを大がかりに動かしたことで、歌に対する集中力が全く殺がれてしまったこと、一番の音楽の聴かせどころでそうしたことに対して、そこまでして表現したいものは何だったのか、どうしても聞いてみたかったので、質問に書いて提出したのですが、主催者によってボツになりました。
私は観客が創り手に思ったことを言える雰囲気は重要だと思います。レストランで食べている人に話しかけるというのは、シチュエーション次第でしょうが、これが野球選手やサッカー選手だったら、「応援してるよ」と声をかける人の方が多いのではないでしょうか。
そういう点では、サンフランシスコ交響楽団がこの状態まで持って来たことはすごい。
日本でも初台駅などで、終演後楽器を持っている人に皆が気軽に感想を言えるようになったらいいなと思います。
(2009.5.30)