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リハーサルがすべて?MTT&SFS
ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団の演奏を初めて聴いた人が共通して思うことは、
どうしたらこんな演奏ができるのだろう?
という疑問ではないかと思います。私もそうでした。
ティルソン・トーマスは自らに関する対談集「Viva Voce」で、この答えのヒントになりそうな話をしています。それは、指揮法について語っている部分なのですが、
演奏において、指揮法のよしあしが影響する場面はあまりない。なぜなら、どういう音楽をつくるかにおいて重要なのは、
一にも二にもリハーサル
だからだそう。指揮法は、初めて顔を合わせたメンバーで1回で合わせなければならないとか、初見で振るとか、そういうときに音楽をつくるための技術だそうです。したがって、通常のシーンでは、指揮の技術は音楽の出来の決め手にはならないそう。
そして現実問題として少ないリハーサルで、音楽の完成度を上げるために彼が考え出した方法とは、
- 事前にアーティキュレーションなどの指示は、ライブラリアンを通して、全員に伝える。
- リハーサルに入る前に、コンサートマスターやセクションのリーダーと内容面ですり合わせをし、個別の合意に至っておく。
これにより、ベース部分の指示や説明、連絡事項にリハーサル時間を使うことなく、本質部分に特化したリハーサルを行なうことができ、それをしないのとは格段の違いがあるそうです。
KEEPING SCOREのチャイコフスキー編でもこれらをやっているシーンがありましたが、あれはビデオ用にやっているだけで、「まさか、実際はそこまでやっていないでしょう」と私は思っていたのですが、本当にやっているらしい。
サンフランシスコ交響楽団のパート練習の写真というのも見たことがありますが、そこにもいました、MTT。
ティルソン・トーマスは、学習曲線ということにも言及していて、ある作曲家の曲を取り上げるときに、最初に作り上げる作業を大変でもきちんと行えば、次に同じ作曲家の他の曲を新たに取り上げるときには、早いスピードで曲を完成させることができるのだそうです。
今となっては信じられませんが、最初にティルソン・トーマスがサンフランシスコ交響楽団に来てアイヴズをやったとき、オーケストラはティルソン・トーマスが思うようなアイヴズからは程遠い演奏だったと話していました。
マーラーなども、この学習曲線の効果が顕著なのでしょう。
とにもかくにも、あの音楽の完成度と「一つになっているさま」には、聴くたびにあ然とさせられます。