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ヨーロッパ各地で芸術への助成削減に抗議運動

10月に発表された、イギリスがアーツ・カウンシルの予算を30%削減するというニュースはショッキングでしたが、欧州各地で政府による芸術への助成を削減するプランの発表とそれに反対する動きが広がっています。

もっとも過激なのはオランダ

オランダでは、右派の連立政権になったことで文化政策が変わり、向こう5年にわたって200百万ユーロ(約224億円@112円/ユーロ)の芸術への支援がカットされるプランが示されました。美術館や図書館は削減が抑えられたのに対し、パフォーミング・アーツは標的に。

またコンサート、映画、劇場などのチケットに課せられる税金も6%から19%にアップする法案も議会で可決。

オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団は、拠点のミュージック・センターが閉鎖でオーケストラも解散で、あまりに過激で驚くばかり。

これら一連の動きに反対する民衆の抗議運動も盛り上っています。芸術がらみの抗議行動に数千人もの人が集まっているのを目にするのは初めて。

CBC News
Thousands rally against Dutch arts cuts

イタリアはストライキ

またイタリアでは、来年度の芸術への予算を146百万ユーロ(約163億円、37%)カットする案に反対するため、映画館、劇場、コンサート・ホール、オペラハウスが一斉にストライキ。

guardian.co.uk
Italy’s performing arts go on strike in cuts protest

アメリカ・モデルは意外にしぶとかった

ヨーロッパの動きを見て感じるのは、芸術団体の財政基盤が行政からの助成中心のモデルは、政府の財政が安定しているときは支援も安定しており、芸術団体や芸術家にとって理想的であるけれど、削減されるときは予測がしにくく、しかも準備がないところに一律にカットされてしまうということ。

これに対して、民間支援がほとんどを占めるアメリカ・モデルは、個々の団体それぞれなので、みんなが一斉に同じ状況に陥るということがない。

オーケストラでいうと、楽団員の給料カットのニュースは方々でしょっちゅう流れていますが、こんな環境でも収支が黒字で観客動員も好調というシカゴ響のような団体や、「攻め」の2文字しか見えないLAフィルのような団体もある。他方、デトロイトやホノルルのように非常に深刻なところもあり、それこそ格差。

それでも行政からの助成は削減に反対すると、税の使い途として「芸術はぜいたく」とか「貧困にあえぐ人々がこんなにいるのにオペラに金を使うのか」の議論になってゆきづまるのに対し、アメリカ・モデルは芸術を支援したい人に向けて知恵を絞って行動することで活路を見出そうとするから自由がきく。

民間支援は景気の影響をモロにかぶって不安定、というイメージの割にはしぶといところもまたアメリカらしいのだと思います。

Chicago Tribune
CSO reports fiscal health is sound

(2010.11.24)