ヨーロッパメディアの評価
ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団の5月のウィーン・プラハ公演について、ヨーロッパのメディアはどう評価したのか見てみましょう。
まず、彼らを若い世代をコンサートホールに呼び込むことや、現代ものやコラボレーションなどを観客に提供することに成功しているオーケストラだと紹介している記事が目に付きます(Kronenzeitung, Die Presse, Frantfurter Allgemeineなど)。
音楽面では、やはりリズムの正確さやエッジが効いていること、響きの透明性に触れているものが多いです(Wiener Zeitung, Die Presse, Kurier, Der Standardなど)。スコアリーディング・解釈の完璧さ、ロジカル・知的であることなども言及されています(Wiener Zeitung, Der Standard, Kurier, Die Presseなど)。「完璧」という言葉が使われていますが、私も「完璧」ということは普通ありえないと思っているので普段は使わないのですが、ことティルソン・トーマスに関しては使ってもいいかなと思っています。
そして何と言っても、彼らのアンサンブルが驚異的であること、ティルソン・トーマスは少ないジェスチュアしかしないのに一つになった音楽が出てくることが、「リハーサル」と「訓練」をいかに重ねてきたかを物語っていると書いている記事がいくつもありました(Kronenzeitung, Die Presse, Der Standard, Wiener Zeitung, Frantfurter Allgemeine, Lidove Novinyなど)。
ネガティブな評としては、あまりに節制された厳しさをあげているものが多かったです(Kurier, Der Standardなど)。情感はあるのですが、構造的なアプローチが前面に出るので、そちらの印象が強くなるからでしょう。隙があることのほっとする感じがないのかもしれません。
ウィーン公演の評では、ティルソン・トーマスがアンコールで「あなたたちのためにワルツを演奏します」と言ったことを「大胆不敵」と思ったが、そのワルツが完璧だったと評しているものがありました(Wiener Zeitung)。このワルツ、私は作曲者名と曲名を聞き取れなかったのですが、サウンド・オブ・ミュージックなどで知られるロジャースの作曲した「Carousel」(メリーゴーラウンドという意味)だそうです。私はこの曲を「ディズニーランドでメリーゴーラウンドに乗っているような曲」とこのブログに書きましたが、ビンゴ!何も知らない私にそう思わせた彼らはすごい。
プラハ公演では、「冬の日の幻想」について、およそこれ以上の演奏は考えられない(Lidove Noviny)とありましたが、私もそう思います。ウィーンに比べると、プラハは「こんな演奏、プラハではめったに聴けない」と絶賛調でした。
多くのメディアがいろいろ書いていましたが、私はDie Presseが書いていることが、一番彼らの演奏を捉えているように思いました。
「オーケストラのサウンドは、何か普通でないと感じさせるほど完璧。この演奏に(厳格な透明さとは対照の)濃さがないと言うことは、もはやむなしい。」
*公演日程やプログラムなどの詳細については、「ヨーロッパツアー鑑賞記」のカテゴリーの記事をご覧ください。
(2007.6.28)