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ヨーヨー・マのヒンデミット協奏曲とブラームスの1番
サンフランシスコ交響楽団の創立100周年記念シーズン。いよいよサブスクリプション・コンサートがスタートしました。最初のプログラムは、ヨーヨー・マを迎えてヒンデミットのチェロ協奏曲と、ベートーヴェンとブラームスというティルソン・トーマスの重点レパートリーの豪華な組み合わせ。
ベートーヴェンのレオノーレ序曲第3番
いつものこのコンビの音楽づくりがされていました。ティルソン・トーマスは指揮棒なしの手振り。
印象に残るのは、ホール後方から吹いたトランペット。1回目と2回目で音量も場所も変えていて、とても遠近感がありました。それに組み合わされる舞台上のオーケストラのまっすぐな響きにもこだわりが感じられました。
その後続く、大きなメロディで弦が伴奏するところは、トーマスらしいメロディの歌わせ方で、予想どおり。
ヒンデミットのチェロ協奏曲
2曲目は、ヨーヨー・マをソリストにヒンデミットのチェロ協奏曲。ヨーヨー・マが出演すると、チケットが飛ぶように売れる。前回のショスタコーヴィチのとき、私はのほほんとしていたら、チケットを買い損ねたという経緯あり。
曲の出だしのオーケストラのリズムがズバッと決まっていました。
マは、基本いつものマ。こういう曲でも、オーケストラのパートとの組み合わせを意識して弾いていました。1楽章のカデンツァ~1楽章おわりもすごく聴かせていたと思います。楽章のおわりの緊張感がすごかった。
ところが2楽章から、結構真剣に譜面を見ながら弾いている。
あまり演奏する機会がない曲だったのでしょうか。危ないところだけ確認するというよりも、これがないとムリというのに近い感じで楽譜を見ていました。
すると、空調の風が吹いて、マの譜面がめくれる。
その瞬間、そこへ飛んできたのがなんと、トーマスの手!
トーマスはマの譜面を押さえながら指揮を続けたのでした。彼は先週のハオチェン・チャンのときもそうでしたが、さすが細かいことが気になるだけあって、危険を察知するのが早い。素晴らしい危機管理能力。
マは3楽章も譜面を見ていましたが、最後の盛り上げのところは、譜面を見ずにきっちり盛り上げて曲を締めくくり、さすがポイントをはずさないスターという感じでした。
暗譜で弾いてクオリティが下がるよりも、見ながら弾いて確実な方がずっと良いと思いますが、今日の2楽章などは、自由に表現する余裕があまりなかったように私は感じました。
2日目以降どうなるか?
ブラームスの交響曲第1番
ブラームスは、ティルソン・トーマスが掘り下げている作曲家の一人。どんな演奏が出るか、楽しみにしていました。
ところどころいろいろやっていましたが、基本は1日目だったので、きっちり作ったという感じでした。
ティルソン・トーマスという指揮者の真髄は、ライブの醍醐味である、何が飛び出すかわからない演奏、その場一回限りのギリギリのところを仕掛けてくる面白さにあると私は思います。でも彼は一定以上のレベルに曲が完成していないと、決して仕掛けたりはしない。まずはきっちり音楽を作ることに注力する。
ここに彼の教育活動をしている姿しか知らない人が、彼の本質を見落としているケースがあったり、ツアーでは曲数が多かったりホールの条件が違っていたりで、なかなかリスク・テーキングに踏み込めないため、イマイチ良さが伝わりきれなかったりする原因があるのではないかと思います。
演奏について、4楽章の弦は、サンフランシスコ交響楽団らしく透徹されていて、しかも暖かみがある響きでした。今回は、「ド・レーミレミド・レーレ」の最後の「レ」の置き方にこだわりがあるもよう。
1日目できっちり出来上がっていたので、2日目以降、どんな表現が出てくるかに期待。
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コンマスのカーリーヘアのお姉さんが、オープニングの週も今週もいなかったけど、病気とかじゃないことを祈ります。先シーズン腰痛のためお休みしていたチェロの首席のじいさんは無事復帰。
(2011.9.14)