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メータ指揮ミュンヘン・フィルを聴く
ルツェルン音楽祭への旅。帰りの飛行機はミュンヘンから乗ることにして、ズービン・メータ指揮のミュンヘン・フィルハーモニーを聴きました。
ガスタイクへ来るのは二度目ですが、前はオルガンのコンサートだったので、ミュンヘン・フィルを生で聴くのは初めて。
街にあるポスターやパンフレットのデザインが、ウェブサイトとも統一されているのですがおしゃれ。今シーズンはマーラー、特に10月のティーレマン指揮「千人の交響曲」の初演100周年記念演奏会が大きな目玉になっています。初演のときと同じフォントを使ってデザインしたポスター類には、初演オーケストラの貫録がたっぷり。
さてメータ。今日のプログラムはウェーベルンのパッサカリア、神尾真由子のソロでブルッフのヴァイオリン協奏曲、後半がチャイコフスキーの交響曲第4番。
メータは3曲とも暗譜。私などは、最近は同じ人に同じ話を繰り返ししてしまうことがたまにあり、後から気づいて「老化現象?」と愕然とするのですが、メータはウェーベルンを含め3曲とも暗譜。その姿勢には頭が下がります。ハイティンクを聴きに行ったりしても、新しく書かれた曲を普通にやっていて、あたり前のように聴いてしまいますが、あの歳で新曲を普通に演奏することは、ものすごいことなのではなかろうか、と最近思います。自分が同じ歳になったとき、彼らと同じような姿勢で物事に取り組めるかと考えると。
演奏について。パッサカリアは、メータは全ての要素を並列に置いていました。それが同時に鳴るので、聴き手は聴く取っ掛かりがない感じ。私はこの曲を数度しか聴いたことがないのですが、そういう曲なのでしょうか。
ブルッフ。神尾真由子を生で聴くのも初めてでした。明るいブラウンのヘアにちょっと朱がかった赤の肩が出たドレスというファッション。
たっぷりと太い線で歌い上げていました。
メータは、オーソドックスな協奏曲のアプローチ。基本的にソロを聴かせるスタンスで、オーケストラだけで演奏する部分になると速めのテンポで動かしていました。したがって、私が全曲の中で一番好きな、1楽章のトゥッティが終わってオーケストラが新たにシンコペーションのリズムで入るところのつなぎ方がイマイチ決まらず。ソロとオーケストラだけの部分が交互に演奏される印象を受けました。
神尾真由子はアンコールのパガニーニ(?曲名わからず)含め、全力で弾いているように感じました。これからの人だと思いますが、昨今海外でソリストとして立つ若手演奏家の中で日本人は、中国や韓国、南米出身者に比べて超がつくほど目立たない。そんな状況下の貴重な一人として、ぜひこれからもがんばってほしいです。
チャイコフスキーの交響曲第4番。メータはメータ歩きで登場し、曲もずっと「メータ」。余計なことはせず、無理に何かをやろうともしない。でもそのことで不満を感じさせることはなく、最後まで演奏を楽しめました。
印象に残ったのは、2楽章の終わりファゴットがメロディーを弾くところの弦の響きと4楽章。4楽章のフィナーレは、力で押すこともなく自然ながら、次第にアジテートしていって盛り上がりました。
ミュンヘン・フィルは手堅く高水準にまとめていました。ホールの音響は、最初に聴いたとき音が拡散するような印象を受けましたが、チャイコフスキーでは音もまとまっていました。
メータは楽団員にもとても尊敬されているようでした。
演奏会としては、上質な普段着という感じで、よいコンサートだったと思います。
久々にドイツのオーケストラを本拠地で聴き、アメリカのコンサートと違いはあるかなと観察していましたが、大きな違いは特に感じませんでした。淡々とした日常風景という印象。
1曲目が大編成の曲で、2曲目に出番がない楽団員が結構いたのですが、舞台横の階段から降りてきて、空いている席に座って聴いていました。そういう光景は初めて見ました。
コンサート:2010年9月21日 於ガスタイク
(結構本格的なセッティングで録音していました)
(2010.9.24)