ベートーヴェン:交響曲第3番<英雄>
KEEPING SCORE Revolutions in Music
ドキュメンタリー
ドキュメンタリーとライヴ演奏の二部構成ですが、ドキュメンタリーは、ティルソン・トーマス(MTT)の旅と音楽とを組み合わせたもの。
旅では、作曲当時のベートーヴェンの足跡を追い、ウィーンと郊外のハイリゲンシュタットを訪ねます。
ベートーヴェンの作曲当時のエピソードやナポレオン、ライバルの影響などの話を取り上げ、これに第一楽章から音楽を紹介しつつ、音楽面のテーマである主題の展開と調性の話、この作品のどこが革命的で、後世にどう影響したのかなどの話をうまく組み合わせて、総合的に作品に迫るという内容。
この作品に、自分の中で整理がつくまで30年かかったと語るティルソン・トーマス(スコアに残るその足跡が壮絶です)の作品への探究心に思わず惹き込まれてしまうので、教育番組っぽさを感じません。話もわかりやすく、テンポも良いので飽きないし、見応えあります。
ライヴ演奏
このDVDが出たとき、私はティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団コンビを聴き始めたばかりだったので、始めは「MTTのベートーヴェン?」 違和感あるかもと思いました。
でも疾走するテンポといい、音楽の構築も、細部の表現も見事な演奏でした。
ティルソン・トーマスが、「この曲はシンフォニー・オーケストラにとって最高の試金石なのだ」と言っているとおり、これを聴けば、このコンビの実力を知ることができます。
そして、彼らのマーラーシリーズはこういう土台の上に成り立っているということもよくわかる。
余談になりますが、私はこの映像を見る度、2楽章のオーボエとフルートが目立つ部分で、ティルソン・トーマスのアップに切り替わった瞬間、
MTTの顔が違う
とつっこまずにいられません。彼の髪の毛はえり足にくせがあるのですが、そのはね具合がそれまでの映像と違うばかりか、顔のむくみ具合というか水分含有量が、切り替わった後は、やけにすっきりしているのです。
ここは、音楽的にはポイントで、だからこそ彼らも出来にこだわり、何日か収録した中で一番いいものを持ってきたのでしょうが、こんなところに聴き手の集中力を殺ぐ落とし穴があったとは。MTT甘し。
そんなこんなで、やはりマーラーは音だけで良かったと思う次第です。
ともかく彼らのエロイカ、騙されたと思って一度お試しください。