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ノリントン指揮ベルリン・ドイツ交響楽団を聴く
マーラー・イヤーのヨーロッパでいろんなマーラー演奏を聴く第3弾は、ロジャー・ノリントン指揮のベルリン・ドイツ交響楽団で、マーラー交響曲第4番(会場:フィルハーモニー)。
プログラムは前半がバッハ。管弦楽組曲第4番 BWV1069と、ソプラノ、トランペット、シュトライヒャーと通奏低音のためのカンタータ51番 BWV51。
プログラム冊子には、今日のプログラムについてのノリントンの意図が書いてありました。私はドイツ語が読めないのですが、字面から想像するに、マーラーはバッハのポリフォニーに世界の完結性を見出だし、そこから多くを学んだ。そこでポリフォニーを切り口にマーラーが描いた世界をひも解いてみようという試みのよう。
ノリントンはシュトゥットガルト放送響とのマーラー4番がCDになっていますが、私は未体験。また、彼は自分の考えをいろんなところで披露していますが、私は詳しく知りません。したがって、先入観なし(2007年にシュトゥットガルト放送響とのウィーン公演でブルックナー3番を聴いたことはある)でどう聴こえるか?
バッハ2曲
今日の演奏は、全曲ノンビブラート奏法。最初耳が響きに慣れず、トランペットが突出して聴こえるように感じましたが、すぐに慣れました。
オーケストラの演奏は少し大人し目でしたが、演奏が進むにつれノッてきて楽しかったです。一番印象に残っているのは、カンタータでソプラノ、シュトライヒャー(チェロ?)、通奏低音の3者の掛け合いが続いたところ。音域が非常に離れた3声の組み合わせが面白いと思いました。
本日のソプラノ:Lydia Teuscher
マーラー 交響曲第4番
そしてマーラー。1楽章のテンポは速かったです。すでに洗脳されたのか、トランペットがバロック風の響きに聴こえました。
2楽章も速い。が、テンポをかなり動かして変化がありました。遅いテンポが逆にワルツのニュアンスを感じさせたりで、不思議な発見でした。コンサートマスターは2台の楽器を持ち替えて弾き分けていましたが、どれが何なのかはわかりませんでした。
そして3楽章。メロディーが大きい(音があまり動かない)ので、どう表現するのだろう?とワクワクでしたが、ノンビブラートでそのまま弾いていました。3楽章もかなりテンポを動かし、テンポの変化で表現をつけていた度合いが高かったと思います。うなるような音が分厚い部分はあっさり目。一番のクライマックスのところも、普通のマーラー演奏のような頂点の響きではなく、バロック的混沌さ(響きが調和しているのではなく、違うものが同時に鳴っている感じ)。
4楽章も速いテンポでした。したがって、歌手は少し歌いにくそう。印象に残ったのは、Sankt~の歌詞のところの声とトランペットの組み合わせの響き。聴いたことのない新鮮さでした。歌の最後のコーラスではヴァイオリンが2か所くらいポルタメントのような表現をしていたのも不思議な響き。最後は低音が強調されていました。
この演奏、文句なしに面白かった。ノンビブラートの響きは必ずしも美しいとは思いませんでしたが、探究心にあふれていて、しかもいろんな表現が決して安直ではない。曲があっという間に感じられました。
お客さんも大ブラボーでしたが、彼のチャレンジをわかって称えているようでした。
オーケストラは何かが傑出しているわけではありませんが、欠けるところもなく、全員一丸となってがんばっていたと思います。
行って良かった!と思えるあらゆる点で質の高いコンサートでした。
ベルリン・ドイツ交響楽団のお客さん
これで3日続けてベルリンの違うオーケストラのコンサートに行きましたが、オーケストラ毎にお客さんの特色がある。
アバドの日はお金持ち&スノッブな印象。コンツェルトハウスはお年寄り。ベルリン・ドイツ交響楽団は若い人もたくさん来ていたし、一番バランスがとれている客層に感じました(このオーケストラがもっとも革新的に動けるポジションなのかも)。ただサイドや舞台後ろの席に少し空席があったのが残念。
ドイツのオーケストラもマーケティングの時代みたいで、会場で顧客調査をしていますと声をかけられました。どこで公演を知り、チケットはどこで買ったか?前にも来たことがあるか等々。
(2011.5.16)