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ニューヨーク・フィルのヤングピープルズ・コンサート体験記

今回ニューヨークで、前々からどんな内容なのか興味があった、ニューヨーク・フィルハーモニックのヤングピープルズ・コンサートを体験することができました。

今シーズン、4回シリーズで企画された最終回。土曜日の午後2時スタート。対象年齢6~12歳でコンサート時間は1時間。

シーズンの共通テーマは ”point” で、4回目の今日はモーツァルルトの交響曲「ジュピター」を素材に、”counterpoint”(対旋律)がテーマです。

キッズゾーン

コンサートに先立って、12時45分からホワイエの全フロアを「キッズゾーン」と名づけ、様々なプレ・イベントが開催されます。

ホールへのエスカレーターを昇ると、歓迎の幕がお出迎え。

幕

コンサートでは、「ジュピター」4楽章の「ド~レ~ファ~ミ~」という4つの音のテーマを素材として取り上げるため、プレ・イベントもそれに関連させています。

対旋律や音楽の構成要素を身体を使ったゲームで体験するコーナー

ゲーム

ト音記号などを自由に書いてみるコーナー

落書き

他にあったのは、

  • 子どもたちが「ド~レ~ファ~ミ~」を使って作曲のアイディアを出したものをミュージシャンが演奏する
  • クイズ大会(みんな即答していたが、私は全然答えがわからなかった)
  • 楽器体験コーナー(ヴァイオリン、オーボエ、ホルン)

これは常設で置いてある弦をはじいて音の高低を体験するもの

弦をはじく

コンサート

コンサートは、ニューヨーク・フィルのエデュケーションのディレクターがホスト。舞台にはスクリーンがあり、コンサートの話題に連動して映像が出る構成。観客の入りはギリギリ7割いくかなといったところ。

コンサートではあらかじめ、今日の内容がダイジェストされたカラフルなハンドアウトが配布されました。→こちら

まずジュピターの4楽章を演奏し、4つの音のテーマを紹介。子どもがお手本で歌った後、会場の皆で歌う。このテーマはモーツァルトが子どもの頃に教会で聴いた旋律が元になって、生涯繰り返し取り上げたテーマであると説明。その例として、最初の交響曲1番や交響曲33番のこのテーマが使われている楽章やミサ・プレヴィスのクレドを演奏。テーマが出てきたのがわかったら手を上げてと言っていましたが、皆ちゃんと手を上げていました。

コンサートには、ホストの他にダンサー兼俳優の2人が出演。セリフのやりとりの他、音楽に合わせて当時は誰もが踊れたという踊りを披露していました。また、ちびっこヴァイオリニストも登場、大きな喝采を受けていました。

その後、話は ”counterpoint”(対旋律)へ。

まず対旋律の概念を理解するための例として、童謡(「ロンドン橋落ちた~」だったと思う)を会場を3パートに分けて輪唱。

その後対旋律が特徴的な曲として、パッヘルベルのカノンとアルヴォ・ぺルトのベンジャミン・ブリテンへ捧げられた Cantus in Meroriam Benjamin Britten を演奏。

最後にジュピターに戻ってきて、ジュピターでは複雑な対旋律の構造(フガート)になっていると紹介。5つのテーマがいろんな楽器に分かれて順不同にそれが繰り返されると説明していました。スクリーンに五線でテーマを映し、それが推移していくのを見せていました。

そして、4楽章を通して演奏してコンサートは終了。

指揮は、今シーズンからニューヨーク・フィルのアシスタント・コンダクターに就いたダニエル・ボイコ。がたいが大きくもみあげが太くて長いお兄さん。バレンボイムの弟子だそうですが、指揮ぶりはバレンボイムとムーティを足して2で割った感じ。しっかり力があって頼もしい印象で、好感が持てました。

コンサート中、終始会場はザワザワしていたのですが、ニューヨーク・フィルは手抜きのない丁寧な演奏をしており、音楽は良かったです。

今回「ド~レ~ファ~ミ~」にフォーカスしていたことで、私もその日しばらく頭の中が「ド~レ~ファ~ミ~」でした。少なくとも参加者はこれが繰り返されて音楽になる、ということを持ち帰ったと思います。企画も準備もしっかりとした内容だったと思います。

大人でも席に座って音楽を聴くという行為の持続が難しい人も結構いて、それでも教育プログラムにがんばらなければならないアメオケって大変だなあとも思いましたが。

コンサート:2010年3月27日エイヴリー・フィッシャーホール

(2010.3.30)