ティルソン・トーマス(MTT)のマーラー 8
ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団のマーラー 交響曲第8番<千人の交響曲>に関する情報を整理したページです。
CDは、第8番<千人の交響曲>と第10番からアダージョがカップリングされた2枚組。
(DSD録音、Hybrid SACD)
→ MTTのマーラー 8 聴きました! (私の感想)
→ MTT/SFSのマーラー8がグラミー賞3部門にノミネート!
→ 祝 MTT/SFSのマーラー8がグラミー賞3冠
メイキング&プロモーション映像
“A Universe of Sound : Recording Mahler’s Symphony No.8”
(iTunesの特典映像と同じ。しゃべっている内容は大したことないが、彼らのチームワークや雰囲気が伝わる)
もっと楽しむためのプラスアルファ情報
SFSコーラスについて
SFSコーラスは、1972年に当時音楽監督だった小澤により創設。現在メンバー155人のうち125人がボランティアで構成されています。
2007年に今の Rognar Bohlin が合唱ディレクターに就任。彼は合唱をやっている人で知らない人はいないという Eric Ericson に師事したスウェーデンの指揮者なのですが、彼の手腕によって、MTT好みの透明感あふれる合唱団遂に完成!の運びとなりました。
録音チームについて
プロデューサーのアンドレアス・ノイブロンナー氏は、ティルソン・トーマスがロンドン響時代にBMGでストラヴィンスキーを録音したときに、代役で担当したときからのつきあい。担当になった当時、同僚皆から気の毒がられたそうですが、波長が合ったらしく、その後のサンフランシスコ交響楽団との録音もすべて手掛けてきました。
現在彼は独立し、シュトゥットガルトから機材一式を持ち込んでレコーディングに臨んでいます。
【MEMO】
- 今回録音に使用したマイク51本(これまでのMTT&SFSのマーラー・サイクルでは毎回40本程度だった)。
- コンサート4公演の中で一番出来のよいものをベースにして、全8音源(PCM方式とDSD方式でそれぞれ録っている)を用いて編集。編集→MTTのチェックが繰り返されるそう。
- 曲の最後は拍手と歓声をなくすため、毎回録り直すそう。その他気になるところも録るそうですが、今回はほとんどその必要がなかったとの由。
- サンフランシスコ交響楽団が録音の舞台裏を公開しています→こちら
コンサートマスターのアレクサンダー・バランチックについて
バランチックは、ティルソン・トーマスが自分の理想とするオーケストラを実現するために、ロンドン響のコンサートマスターだった彼を口説き落としてサンフランシスコへ連れてきた運命の人(?)。2001年よりコンサートマスターを務めています。
彼が使用している1742年製ガルネリ・デル・ジェスは、ハイフェッツが使っていた銘器で、サンフランシスコのファイン・アーツ・ミュージアムからシンフォニーに貸与されています。サンフランシスコ以外への持ち出し禁止の条件がついているため、ツアーでは聴けません。
ティルソン・トーマスとの二人三脚はもちろん、彼がメインのコンサートや室内楽シリーズなど、こんなに活躍の場があるコンサートマスターは他にいないのでは?と思います。
彼のソロの“扱い”は、今回の千人の大きな聴きどころの一つです。
価格の比較はこちらから
- SFSymphony Store (価格 27.95ドル+送料1.44ドル)
- iTunes
価格19.99ドル。彼らは値づけまで横並び意識なし。
- 石丸電気 Jazz&Classic 館
価格3654円+3%ポイント還元
MTT&SFS初、店頭にパネルが置いてある。
*****
- 【補足】勘違いしている人が多い
レーベル→ SFS Media (自主レーベル)
海外でのディストリビューター→ Avie
この内、日本での取扱いは→ ㈱東京エムプラス
- 現在(2009年8月)のところ、マーラー・サイクル全11作16枚のセット、BOX販売の予定は発表されていません。SFSymphony Store で一括購入の割引価格は出るかもしれません。
皆さんのCDレビュー・感想
ブログ
- トロンボーン吹きによるクラシックの嗜好/マーラー:交響曲第 8 番《千人の交響曲》/ティルソン・トーマス [SFS Media]
- ぶらーぼぉ。マイケル =ティルソン=トーマス×サンフランシスコ交響楽団 マーラー8番「千人の交響曲」「執念の仕事」
- Interchanging Idioms:Michael Tilson Thomas and the San Francisco Symphoy Complete Mahler Cycle with a Breath-taking Recording
メディア
- AudioAccessory (オーディオアクセサリー) 2009年秋号
- サンフランシスコ・クロニクル
- サンフランシスコ・クラシカル・ヴォイス
MTTが再現部の Veni の「ヴェー」をのばしている件
ティルソン・トーマスが本の中で理由を話しています。
マーラー「千人の交響曲」レコーディング完全リポート
2008年11月に4日間にわたって行われた、
“波乱万丈”ライブ・レコーディングのコンサートの模様を
私が完全リポートしました。→こちら
キャストのリストや舞台配置の詳細なども掲載。
今後のリリース予定
CD
リュッケルト歌曲集(スーザン・グラハム)、子どもの魔法の角笛、さすらう若人の歌(いずれもトーマス・ハンプソン)が、2010年リリース予定。
DVD
マーラーは、サンフランシスコ交響楽団がマルチメディア展開しているKEEPING SCORE プロジェクトで、ドキュメンタリーのテーマに取り上げられることが発表されています。ドキュメンタリーはコンサート映像(交響曲第5番)とセットでDVD化されます。リリースは、サンフランシスコ交響楽団の創立100周年にあたる2011-2012シーズンを予定。
- 詳しくは
マラ5のKEEPING SCORE(DVD)が出る!
(記者会見に行ったときの話)
- 現在、Keeping Score マーラー編制作中
MTTが舞台裏の写真を公開していますが、日本の大先生たちみたいに扱われていない。
ひたすらに執念あるのみ→こちら
【追記】
当初、上記のとおり発表されましたが、2009年9月のマーラー・フェスティバルでマラ5の日に撮影は入っていなかったという情報があり、コンサート映像の曲目は変更の可能性があります。
KEEPING SCORE のマーラー編が出ることは確定しています。(2009.10.6)
2009年9月のマーラー・フェスティバルについて
サンフランシスコ交響楽団では、マーラー・レコーディング・プロジェクトの残り、リュッケルト歌曲集と「さすらう若人の歌」の録音と、KEEPING SCOREのマーラー編の撮影を兼ねて、9月に3週間にわたるマーラー・フェスティバルを開催します。
秋の連休にあたりますので、日本からも出掛けやすい日程です。サンフランシスコ・オペラの新音楽監督ルイゾッティ指揮トロヴァトーレ等と組み合わせられます。
- ドキュメンタリー用に収録する曲目リスト→これ、マーラー・カルトですか?
- フェスティバルを紹介した記事→こちら
- ただし、お出かけになる方はひとつだけ注意→こちら
ユニバーサル・エディションのMTTインタビュー
マーラーの楽譜を出版しているユニバーサルでは、51歳で亡くなったマーラーが、2010年(生誕150年)2011年(没後100年)と連続してメモリアル・イヤーにあたることを記念し、マーラーに関する情報を網羅したブログを展開しています。
その中に、マエストロたちにマーラーに関する同じ質問をぶつけるインタビュー・コーナーがあるのですが、ティルソン・トーマスも登場しています。→こちら
物静かに話すマエストロとか、音楽バカ全開の人(誰とは言わない)とか、それぞれの個性が見てとれて楽しい。
サンフランシスコ交響楽団のビジネスモデルに思う
サンフランシスコ交響楽団のマーラーは、音楽ビジネスのモデルとしても興味深いです。
従来日本では、日本語のクローズドな市場を広告と評論家のご託宣が支配してきました。
これに対して、サンフランシスコ交響楽団はインターネットを介して直接顧客とつながるモデル。ネットを使って作り手が自分たちのフィロソフィーや思いを直接伝え、これに共感した人たちのコミュニティに支えられています。
彼らは自分たちで作って自分たちで売っている。しかも今まで自主レーベルのアーティストというのは、自分たちのウェブサイトで直販していても、ごく一部にしか知られていなかったり、わざわざ取り寄せることに手間やコストがかかって、結局ディーラーがいないと売れなかった。
ところがサンフランシスコ交響楽団のウェブサイトは強い。そして彼らには情報発信力がある。コンテンツを作った本人たちが一番力を持っているというのは、クラシック音楽界初のケースではないでしょうか。
これは仕組みを変えてしまうパワーなのだと思いますし、やはりこういう人たちがサンフランシスコ・ベイエリアから出てきたということが非常に興味深く、そういうことを観察するだけでも楽しめると思う訳です。
この辺りを考えるにあたって参考になる本→
マーラー・レコーディング・プロジェクトまでの道のり
そんなサンフランシスコ交響楽団が、自主レーベルでCD制作を始めたいきさつや道のりの話が面白い。
サンフランシスコ交響楽団のプレジデントとエグゼクティブ・ディレクターが、ペンシルバニア大学ウォートン校・ウェスト(経営大学院。数年前にウォートン校の分校がサンフランシスコにできました)のリーダーシップ・フォーラムでこの話をしています(2005年の記事)。
レコード会社が、既に市場にマーラーの録音があふれていることを理由に新録音に難色を示したこと、彼らがやろうとしているような(ハイエンドの)市場なんてないと言われたことがずっと皆の頭に残ったという話など興味深い。
その他にもティルソン・トーマスがやった諸改革や新しい取り組みの話など、読み応えがあります。
→こちら (ウォートン校のウェブサイト)
データ編
- 2001年9月マーラー・レコーディング・プロジェクト開始
- CDの累計販売枚数13万枚、ダウンロード6万回
- 6番、3番、7番がグラミー賞受賞
(ただし、彼らのマーラー・サイクルで賞をとった作品ととらなかった作品に出来の差があるとは思わない。だから販売上のキャッチフレーズになるくらいの意味しかない。) - マーラーのレコーディングによりティルソン・トーマスが2005年のグラモフォンのアーティスト・オブ・ザ・イヤー
- これまでリリースした全作品がビルボードのクラシカル・チャートのトップ10入り
リリース日程
- iTunes →8月11日(北米サイトのみ特典映像付)
- SFSymphony Store他 →8月25日