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ジンマンの「グレの歌」

ルツェルン音楽祭2010で聴く最後のコンサートは、デヴィット・ジンマン指揮チューリッヒ・トーン・ハレ管弦楽団とスイス・ロマンド管弦楽団の混成オーケストラによる、シェーンベルク「グレの歌」。

6日連続でオーケストラ・コンサートを聴くなんてことは人生で初めての体験で、食傷するかと思いきや全然平気でした。このまま居座って音楽祭の最後に登場するグスターボまで聴きたいくらい。

さて、今回はチューリッヒ・トーンハレとスイス・ロマンドの混成オーケストラ、合唱も3団体が参加する記念すべきイベント。

舞台いっぱいに並ぶ大編成のオーケストラや、サントリーホールで言うところのP席全部を占める合唱は視覚的に圧倒的でしたし、曲が終わった後に出演者が互いに握手していた姿も、特別なイベントであることを感じさせました。

ただ客席は少し空席があり、シーズン中なら通常価格で聴けるオーケストラが音楽祭価格になるとハードルが高いのかなという気がしました。

それにしても、サロネン2日、MTT3日と続けて聴いた後のジンマンは、

衝撃的に凡庸

に聴こえました。基本的にマーラーのCDを聴いたときに受ける印象と実物は同じ。私は彼の立ち位置は、一般人の延長線上にあると思います。だから聴き手が自分の常識の範囲外のことをつきつけられてとまどうということがない。自然で安心して聴ける音楽。

そこに魅力を感じる人もいるだろうし、居心地のよさがあると思います。

でも音楽から何かを考えさせられたり、インスピレーションを得ることはない。

オーケストラは、楽譜のとおりきっちり弾いていた印象を受けました。特に特色はなし。ジンマンはきっぱりとわかりやすい棒で、余計なことは何もせず。

ソリストは、ヴァルトタウベのぺトラ・ラングがひとり暗譜で歌い、気迫のこもった歌を聴かせていました。

第二部の特徴的なメロドラマみたいな旋律は、情念渦巻くというよりも多くの要素の中の一つという扱いでした。最も印象に残っているのは男声合唱で、人数も多かったし響きも素晴らしかったです。

フィナーレは、合唱もオーケストラもフルに鳴っていましたが、ジンマンはオーケストラのバランスについてあまりコントロールしようと思っていなかったみたいで、構造的に立ち昇る感じはしませんでした。

でも曲が終わったとき、とても大きなブラボーの声がかかったので、支持者はたくさんいたと思います。

カーテンコールは比較的淡々としていました。

サロネンやMTTの前にジンマンを聴いていたら、また思うところは違っていたかもしれません。

録音していたのでどこかで聴く機会があると思います。

2010年9月14日ルツェルンKKL

Tonhalle-Orchester Zurich
Orchestre de la Suisse Romande
NDR Chor
Damen des Choeur du Grand Theatre de Geneve
Staatlicher Akademischer Chor Latvija
David Zinman
Christine Brewer, Tove
Petra Lang, Waldtaube
Stephen Gould, Waldemar
Andreas Conrad, Klaus-Narr
Stephen Powell, Bauer
Wolfgang Schoene, Sprecher

(2010.9.16)