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ジェームズ・ガフィガンのプレトークが面白かった

サンフランシスコ交響楽団では毎回開演1時間前に30分間のプレトークがあります。今週はアソシエート・コンダクターのジェームズ・ガフィガン(James Gaffigan)が担当。指揮者ならではの話が聞けるのではと張り切って出かけました。

お客さんは、オーケストラフロアの8割程度。

アメリカ序曲

本日のプログラム1曲目は、プロコフィエフのアメリカ序曲。

まず編成の話。チェレスタ、2台のハープ、2台のピアノが入り、キーボードが重要な役割を担うこと、弦がチェロ1本、コンバス1本しかない点に特徴があること、そんなことからウィンド・アンサンブルでよく取り上げられる曲であるという話をしました。

次は形式の話。ABACAとなっていて、最後のAは違う形で出てくる。録音を抽出したものを聴きながら、順番にその部分の特徴を話していました。

メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲

プログラムのメインはムターをソリストに迎えてのメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲。

まずこの曲の初演のときにソリストが使った楽器が、現在サンフランシスコ交響楽団コンサートマスターのアレクサンダー・バランチックが使っている1742年製ガルネリ・デル・ジェスだという縁を紹介。

3楽章が分断されずつながっている点や、普通コンチェルトはソロが出てくるまでにオーケストラの前置きがあるけれど、この曲はいきなりソロが出る点が新しいと言っていました。出だしの部分はティンパニの伴奏を聴いてと指摘。

他にはオーケストラにソロが重なる箇所やソロが伴奏にまわる部分について、録音を聴かせていました。

メンデルスゾーンで彼が一番強調していたのは、次の楽章へのつなぎ目の部分。1楽章の最後、emollの5度のhがバスーンで残って、そこからCdurに移るまでの移り変わりに注目してと言っていました。同様に2楽章の終わり、emollから3楽章がEdurになるという変化は、過去にベートーヴェン等が用いた常套的な方法であることを指摘していました。

ラヴェルのワルツ2作

プログラムの最後は、ラヴェルの優雅で感傷的なワルツとラ・ヴァルス。

優雅で感傷的なワルツの方は、ピアノ版を聴かせて、あなただったらどうオーケストレーションするか考えてみて?と考えさせた後でその部分の管弦楽版を聴かせていました。

彼はティルソン・トーマスのリハーサルを聴いていて、オーケストラに要求していた内容をいくつか紹介していたのですが、口調と手ぶりをまねていてそっくりでした!

ラ・ヴァルスの最後は、ホフマン物語で踊っていたオランピアがコントロール不能になり、まわりがひっくり返ってめちゃくちゃになってさあ大変というところに突然最後の「ダダダダ、ダン」が

The Walz culture is dead.

という宣告で全てが終わるのだそう。いかにもMTTが言いそうであります。

お買い得

サンフランシスコ交響楽団には、このアソシエート・コンダクターのジェームズ・ガフィガンとレジテント・コンダクターのベンジャミン・シュワルツという二人の若手指揮者がいます。

私はこの2人は買いだと思います。なぜなら、彼らは先進的な取り組みの数々にかかわってきているから。まさに「見晴らしのよい場所へ行け」です。

サンフランシスコ交響楽団はチームMTTなので、彼らも陰に日向にいろんな場で役割を果たしているのです。

こういう経験を積んだ若い人たちにこそ、未来への突破口があるように思いますが、日本は絶対に巨匠じゃないと困るんですといったところでしょうか。

(2009.3.1)