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シカゴ交響楽団の Music Now 体験記

ムーティ時代に突入し、シチズン・ミュージシャンのプロジェクトをはじめ、次々と新機軸を打ち出しているシカゴ交響楽団。

その一つが、同時代の音楽を新しいかたちで提供しようという Music Now シリーズ。一体どういうものなのか体験してきました。

場所は、ミレニアム・パークにあるハリス・シアター。モダンな建物。
ハリス・シアター

ホワイエ。シカゴ響のアッシャーさんたち(ご案内係。シニアの方々によるボランティア)がいつもの黒の蝶ネクタイ姿なところがアンマッチで微笑ましい。
ホワイエ

中は1000人くらい収容で、演劇などのシアターによくある黒い壁で鉄骨の枠組みがむきだしになっている空間。

このシアターは飲み物持ち込みが可。ホワイエで売っていたシャンパンを持って入る人も結構いたし、客席を売り子がまわってお酒を売っていました。

お客さんは意外なほどよく入っていました。やっぱりシカゴは都会で、こういうものにビビッと反応する人がたくさんいるのでしょう。入場料が一番高くて20ドルだったので、それも影響していたかもしれません。

ミュージシャンはシカゴ響のメンバー10人ほど。普段着でした。

演奏した曲は2曲。まず、アルゼンチンの作曲家 Martin Matalon のLas siete vidas de un gato。1900年ごろの無声映画に合わせて演奏されました。映画は白黒で、内容はいわゆるナンセンスな不条理もので、グロテスク。ストーリーはあってないような感じ。

演奏の後、このプロジェクトのコンポーザー・イン・レジデンスであるメイソン・ベイツとアンナ・クラインが登場して、シリーズを紹介する話をしました。2人とも写真やビデオで見たとおりで、キュートな感じ。

休憩はなしで2曲目。Mouse on Mars というエレクトロニカのバンドが加わって、skik field, part1, part2 and 11 を演奏。

こちらは映像がなく、舞台の背景の照明の色を変化させたり、ドライアイスで演出したりしていました。

今日のコンサートは音をマイクで拡声していました。かなりパンチのある音で、音量的に私にはヴァイオリンはキーキーしているし、トランペットはうるさく聴こえました。それこそニュー・ワールドの新しいホールだったら、こういうのを拡声せずに生の音でできそう。せっかくがんばっているのにもったいないなと思いました。

もう一つ思ったのは、指揮者。今日の指揮者は新進気鋭のAndre de Ridder。いろんな現代ものやコラボレーションなどで活躍している方なのですが、客席から見ているとどうしても「オタク」に見える。そこへ行くと、どんなに実験的な作品を演奏しても“エンターテインメント・ショー”にして聴かせてしまうMTTって、やっぱりクラシック音楽界の異常値なのか?と思いました。

コンサート会場を後にするとき、エレベーターに乗り合わせた20台後半~30歳くらいのお姉さんに「どうだった?」と聞いてみたところ、「素晴らしかったわ~、クールよクール!」と言っていたので、「これがジェネレーション・ギャップというものか!!」と感慨深かった私でした。

このシリーズは今シーズン4回あり、最後の1回が3月に予定されています。

(2011.1.31)