サンフランシスコ交響楽団の顧客志向とは?
顧客志向というと、市場のニーズを探り、それに合致した商品を開発して市場に提供するというマーケット・インの発想が重要だといわれています。
では、ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団は、この点においてどういう行動をとったのでしょう?
まず、【音楽面】
音楽面での、ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団は、マーケット・インではありません。
なぜなら彼らは、自分たちから観客に音楽でインスピレーションや、新しい発想を与えるのだというスタンスだからです。
したがって、彼らのプログラムを見ると、知らない曲や現代ものも相当数入っています。
でも、こういう曲を取り上げるかわりに、聴く人にあらかじめヒントやアイディアになる座標軸を示してフォローしているということは、ご説明しました。
クラシック音楽の裾野を広げるというと、わかりやすい曲、司会付、演奏時間短めなど、集中力を必要としない方向に傾きがちです。しかしながら、ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団がこのようなアプローチをとりつつも、若い新たな観客を集めたという実績は、多くのことを示唆していると思います。
次は、【サービス面】
サービス面に関しては、彼らは徹底的にマーケット・インで、芸術団体というよりもサービス業に徹しています。
彼らのやっていることは要するに、経営基盤である定期会員を大事にするということ、新しい顧客にとってバリアになるものをできる限りなくすこと、大勢に影響しないものにはこだわらないということの3点に尽きるのかなと思います。
(2007.3.4)