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サンフランシスコ交響楽団のルツェルン音楽祭2010を総括
ルツェルン音楽祭2010に出演したティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団の3公演を聴き、わかったこと&考えたことのまとめです。
演奏の完成度
ルツェルン音楽祭のゲスト・オーケストラは、各団体3プログラムを披露するのですが、サンフランシスコ交響楽団の場合、曲数が多いと彼らが本来目指す精度で演奏することは難しいのではないかと予想していました。
実際、前回2007年のヨーロッパ・ツアーは訪問都市が多かったこともありますが、曲によって完成度にバラツキがありました。
そんな事前の予想に反し、今回は演奏した全曲が高い完成度になっていたと思います。CDのマーラー演奏のレベルを10%上げて、他の曲すべてをマーラーのレベルに揃えたと言えばわかりやすいでしょうか。ここまで準備して来たことは特筆に値すると思います。
このことに関するMTTのコメントはこちらの記事で紹介しました。
MTTの挑戦その3:フレンチ・プログラム
ルツェルンで演奏することの意味
そうした彼らの努力の反面、ルツェルンで演奏することで、彼らの評判がどれくらい広がるかという点を考えると、あまり影響しないのではないかという気がしました。
カーネギーホールで演奏していた方がよっぽど影響力があるのでは?
と私が感じた理由は客層。観客の入りは非常に良かったのですが、どういう人が来ていたのかはイマイチ怪しい。
特にマーラーの日は、チューリッヒ保険がスポンサーでした。と言っても日本の生保が伝統的営業スタイルでチケット配った、みたいな光景ではなく、会場にはブルーのカーペットが敷かれて着飾ったエグゼクティブな人々でとても華やかだったのですが、必ずしも音楽を聴きたくて来ている訳ではない。
私の前の席のチューリッヒ保険で来た男性(皆ネームカードをつけていたのですぐわかる)も、見た目とてもエグゼクティブでしたが、全く落ち着きのない態度&演奏中おしゃべりでした。
ヨーロッパの音楽祭は大企業のスポンサーなしに成り立たず、彼らは必要な存在なのでしょうが、チケット価格やもろもろの条件で、本来聴いてほしい層には十分届いていないと思うと残念。
レビュー
レビューは探したのですが、ネットではうまく見つけられませんでした(やり方のせい?)。アバドのレビューはたくさんあったのですが、評論家はアバドの日以外はほとんど来ないのかもしれません。
一つ見つけたのは、ドイツ語を日本語の自動翻訳にかけたら、めちゃくちゃな文章になったのですが、おおよその内容は、ベートーヴェンは受け入れ難し、フレンチはOKみたいな感じでした。
やはりドイツ語圏の評論家は、MTT/SFSコンビの日頃の演奏体系(?)を知らないから、適応不全を起こすのでしょう。
MTT/SFSコンビはルツェルンの後ミラノとトリノに行き、イタリアでは彼らの演奏は大いにウケたらしいので、やはり新しいチャレンジへの反応というのは、気質の違いが影響するのだと思われます。
ミラノ公演(フレンチ・プログラム)のレビューはこちらの記事で紹介されています。
(2010.9.24)