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サンフランシスコ交響楽団のブラームス・フェスティバル

今回聴いたのは、毎年テーマを設けて行なっているフェスティバルの初日。今年のテーマはブラームス。

スカッと青空なサンフランシスコ。地元では「シンフォニー」と呼ばれているのですが(およそ他のオーケストラは想定されていない)、そのことがよくわかる文字の大きさです。

フェスティバルは、ブラームスが室内楽の作曲家として多くの作品を生み出し、ピアノコンチェルトや声楽曲などでも成果を出した後に交響曲に至ったそれらを様々に体験することで、彼の作品がマスターピースとして愛され、多く演奏されるゆえんに迫ろうというもの。

プレコンサート

コンサート1時間前から毎回、オーケストラ・メンバーによる室内楽が日替わりで披露されます。

私が行った日は、オーボエ首席が木管編成にアレンジした「ヘンデル・ヴァリエーション」。

私はこの曲が大好きで、よくつまみ弾きして遊んでいた(まともには弾けない)ので、ピアノ譜からのアレンジがよくできていると思いました。

演奏の方は、ちょっと練習不足?まあ普通かなといったところ。

ピアノコンチェルト第2番

いよいよコンサート。1曲目はアンスネスのピアノで、ピアノコンチェルト第2番。アンスネスを生で聴くのは初めてなので、とても楽しみにしていました。

出だしのピアノのアルペジオが高音で落ち着くところの音が、とてもクリアできれいでした。和音の連打のところは、もう少し音が底に抜ける感じがほしいかもしれません。アンスネスは体格がいいので、ブラームスも余裕です。夫によると、ランランが聴きに来ていたそうです。

MTTのコンチェルトは、毎回聴き応えがあるのですが、今回も曲への踏み込み度合いが常識をはるかに超えています。

非常に完成度高く仕上がっており、曲が終わるとお客さん総立ちでした。

交響曲第4番

プログラムの後半は、交響曲第4番。

これが「どうしちゃったのSFS?」

というくらい素晴らしかった。あまり期待はしていなかったのですが、マーラーなんて目じゃないくらい、過去聴いたMTT&SFSで最高の演奏でした。MTTは、

「マジだってできるんだぜ(ジャンプしちゃうけど)」

という感じで、えらく気合が入っていました。

指揮者のジャンプといえば、のだめのカタイラさんを思い出しますが、MTTの場合は、カタイラさんの垂直方向のジャンプと違って水平方向。弦の分厚い音を引き出すために、そのパートの方向にジャンプ。言葉ではわかりにくいかと思いますが、詳しく知りたい方はうちに来ていただければ、夫がMTTのまねをしてお見せします。

弦の響きもアンサンブルも文句のつけようがありません。あっけにとられて、

「こんなブラームス、聴いたことない!」

としか言葉がなかったです。今回のフェスティバルでは、超定番曲からいかに新たな発見があるかということがフォーカスの一つだったので(事前にMTTは、地元に向けて今回のブラームス・フェスティバルの意図を発表していたらしい)、まさに狙いどおりの成果と言えるでしょう。

ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団は、現在こうした定番曲に新たな光を当てるということに力を入れているので、ぜひこうしたプログラムをお試しください。音楽の完成度の次元が違う、解釈のパラダイムが違います。

MTT

終演後はMTTに挨拶へ。

これがまた私は客席から出てすぐ行ったのに、行ったら既にMTTは着替え終わっていて、シンフォニーの支援者のマダムたちとおしゃべり。何でそんなに早いんだ?

MTTはジャンプしちゃっても髪の毛ひとつ乱れない。曲が終わっても汗だらだらになったりせずにさら〜っとしているから便利。

マイアミに聴きに行った話をしたら喜んでいました。

今回のMTTへの手土産は、一本で赤と青に分かれている色鉛筆1ダース。意味は、

「練り上げがんばってください」

MTTは即座にこの高度(?)なプレゼント(500円くらいだった)の趣旨を理解し、

「リタイヤするまでもつね」と笑っていました。

指揮者にリタイヤなんてあるのか?MTTはあの調子(人と違うことを平気でやるという意味)だから、やるだけやったらすぱっと終止符を打つくらいのことをやってもおかしくはないけれど。

それにしてもまたブルーのシャツを着ていたMTT。昨年訪ねたときもブルーのシャツだったし、来シーズンの冊子の表紙の写真もブルーのシャツだ。同じシャツを何枚も持っているのか?それとも気に入っちゃってそればっかり着ているのか?どっちなのか知りたい。

期待を大幅に上回ったサンフランシスコ交響楽団のブラームス。今回コンサートを一回しか聴けなかったのですが、大満足でした。

(2008.5.8)

サンフランシスコで仕入れたサンフランシスコ交響楽団最新情報へ続く

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