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進化する音楽体験
〜サンフランシスコ交響楽団が2008-2009シーズン・プログラムを発表〜
ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団の2008-2009シーズン・プログラムが発表されました。
目玉は何と言っても、生きている作曲家の曲がメインのプログラムが並んでいるということ。
最初に10〜15分位やるのとは訳が違います。プログラムについてMTTは、
「長年やりたかったことを実現できる日が来て嬉しい。」
とコメント。1995年に音楽監督になって以来、ちょっとずついろんな作品を織り交ぜつつ、聴衆の耳を育ててここまで来ました。これがティルソン・トーマスの偽らざる心境だと思います。
客演では、ファビオ・ルイージが初登場で、フランツ・シュミットをやります。
Welcome to the San Francisco Symphony!
コンポーザー・レジデンシー
サンフランシスコ交響楽団関係者は現在、2011年の創立100周年に向けていかに盛り上げていくかという点に、もっぱらの関心があるわけですが、第一弾として、コンポーザー・レジデンシーという企画を新たにスタート。
栄えある初代は、ソフィア・グバイドゥーリナ。
来シーズンは、2週間にわたり、グバイドゥーリナの特集を組み、新作1曲とアンネ・ゾフィー・ムターをゲストに迎えてヴァイオリン・コンチェルトの第2番をやります。
グバイドゥーリナ本人がサンフランシスコに来て、お客さんに話をしてくれるそう。音楽聴いて、どんな人なのか?とずっと思ってました。見たい。
イノベーティブ&コンサバティブ
来シーズンのプログラムでは、生きている作曲家の曲を10曲、アメリカの作曲家の曲を11曲取り上げます。この中には、ワールド・プレミエが2曲、U.Sプレミエが2曲含まれています。
ベイエリアの作曲家に新作を委嘱する他、シーズン・フィナーレには、Gilbert and Sullivanの「Iolanthe」というオペレッタをやります。
シーズンを通して、サンフランシスコ交響楽団が初めて取り上げる曲は23曲。その中には、ヘンデル、モーツァルト、シューベルトなども含まれています。コンテンポラリーを拡大しつつ、コンサバティブも深化させ、よりバラエティに富んだ音楽体験を提供する内容になっています。
マーラー交響曲第8番<千人の交響曲>
これに関しては、今度こそ完結するマーラー交響曲第8番<千人の交響曲>をご覧ください。
ラン・ラン特集
特集には、ピアニストのラン・ランが登場。コンチェルトの他、ソロリサイタル、室内楽、教育プログラムにも参加。楽しみです。
サンフランシスコ交響楽団の教育プログラムの面白いところは、毎シーズンのゲスト・アーティストが、彼らの取り組みに賛同して参加。そのアーティストならではのものを提供していってくれるという点です。
生オルガンの「オペラ座の怪人」
来シーズンは、デイビスホールのパイプ・オルガン(全米で最も大規模だそう)を入れて25周年を記念し、オルガンをフィーチャーしたコンサートを多く企画。
生オルガンで「オペラ座の怪人」の映画を上演するそうです。
フェスティバル
毎年行なっているフェスティバル。来シーズンは5月に、シューベルトとベルクという二人のウィーンの作曲家を取り上げます。
シューベルトとウィーンというテーマは、ラ・フォルジュルネ・オ・ジャポン2008のテーマと奇しくも同じ。
ラ・フォルジュルネは、シューベルトとその周辺の19世紀の作曲家を取り上げます(モーツァルトとベートーヴェンもいる)。これに対して、シューベルトにはベルクをもってくるMTT。
このテーマは、4月にニュー・ワールド交響楽団でウィーンフィルのメンバーとともにやるフェスティバルでも取り上げます。
ティルソン・トーマスの意図は、シューベルトが開花させたロマン主義が発展し、ベルクを最後にモダニズムに突入する、その時代を転換させた二人の作曲家をウィーンという切り口で取り上げるというもの。
ソリストは、ブロンフマン、フィッシャー、デ・ヤング、シャハムなど、いつものMTTが呼んで来るメンバー。
ツアー
ツアーは、東海岸と西海岸のアメリカ国内を予定。目玉はバーンスタインのフェスティバルとそれに続くカーネギー・ホールでの2公演。ラベック姉妹のプーランクがメインとベートーヴェンの第九の2プログラムです。
来シーズン、ヨーロッパツアーはなし。来日もなし。
総括
サンフランシスコ交響楽団のプログラムには、いくつかの転機があったと語るMTT。
ティルソン・トーマスが音楽監督になった最初の5年間くらいのアメリカン&近代路線。次はマーラーのレコーディングが大きな位置を占めていた時代。
そして2007-2008シーズンあたりからまた新たな展開に舵を切り、2008-2009シーズンではそれが鮮明に打ち出されているように思います。
今後2011年の創立100周年に向けて展開していくことでしょう。
100周年は周りも含めて、ただならぬ気合の入りようを感じますが、組織としても芸術面の充実という点でも共にピークにある中で、節目を迎えられるなんて、めったにないことだと思うので、ぜひこのまま突き抜けていただきたいです。
プレスリリースはこちら
(2008.3.4)