コープランドとアメリカンサウンド
KEEPING SCORE Revolutions in Music
ティルソン・トーマスの問題意識、「アメリカンサウンド」と「アーティストの社会に対する責任」を網羅したコープランド編。
ドキュメンタリーの視点
プロムスでKEEPING SCOREプロジェクトを紹介し、このドキュメンタリーを上映したときに、サンフランシスコ交響楽団は3つの視点で制作したと話していました。
一つは、コープランドの音楽、二つ目は、コープランドの一人の人間としての側面、3つ目が、第二次大戦を中心とする社会背景だそうです。
内容
コープランドは、始めは前衛的な音楽に傾倒する。しかし、大恐慌と戦争という社会的な影響から、次第に社会とアーティストの関わりを考えるようになり、多様なアメリカ人皆が共有できる音楽とは何かを探求する。その結果シンプルな音楽に至るという過程を辿る内容。
音楽を実際に聴きながらその変遷を辿っていくのが非常に興味深いし、最後に奏でられる「アパラチアの春」とコープランドの姿が、一人の芸術家の生き様として圧倒的な迫力です。
今回は、ティルソン・トーマスが前衛的な音楽をピアノで弾くシーンがいっぱいあるのですが、見事に似合っている。一音「カキーン」と弾いただけなのに、トーンクラスターに聴こえるってどういうこと?
ウェブ版
ウェブ版の方は、コープランドの人生をいくつかの時代に分け、年代ごとにより詳しく社会背景や音楽を辿ることができます。本人の資料も多く残っており、充実した内容。
これぞMTTワールド
ドキュメンタリーに続く演奏は、「アパラチアの春」のオリジナルバージョンで、13人で演奏されています。
この演奏はすごい。
最初気軽な気持ちで聴いていると、「え、今の何?」となり、巻き戻して最初から正座して聴き直す、そんなパワーがあります。
演奏している人数が少ない分、いつもよりもさらに突き詰め感が漂っており、あぶり出される精神が壮絶。
ピアノパートが非常に効いていると思うので、私は管弦楽版よりこちらの方が好きです。
ちなみにこの映像は、サラウンドシステムのプロモーション用サンプルに採用されていて、秋葉原やビックカメラなどのオーディオ・ビジュアルコーナーへ行くと、かかっていたりします。