コンサートの観客を増やす
今まで、サンフランシスコ交響楽団の活動をいろいろ紹介してきましたが、今日は、彼らがコンサートの観客を増やすために、どのような活動をしてきたか整理します。
観客を増やすためには、
方策1.既存の顧客の満足度を上げてファンになってもらう(=リピーター)
方策2.新しい顧客を開拓し、裾野を広げる
この2点を実現しなければなりません。
では、このために、どういう問題があって、それにどう対処したのでしょうか?
問題:コンサートを聴いてもつまらない(方策1)
ここは、ティルソン・トーマス(MTT)が能力を発揮した部分です。
- コンサート毎のプログラミングに、何か共通するものを設定して、それに様々な角度からスポットライトをあてることで、観客にインスピレーションを与えるような内容にした。
プログラミングは、欧米のメディアが彼らの活動を賞賛するときに、必ず言及しています。私もそんなことは知らずにコンサートに出かけ、プログラミングが絶妙だと最初に思いました。 - 演奏者の意識を自己満足ではなく、観客の感性に届く演奏をするという方向に変え、プレゼンテーションも観客を惹きつけるよう工夫した。
- 楽しんで聴いてもらうための座標軸を提供した(詳細は、別途説明します)。
問題:クラシック音楽よりも他にもっと楽しいことがある(方策1・2共通)
これは、音楽に競争力をつけることが最優先です。
- 自分たちの音楽の魅力を高めることに注力した。
具体的には、一回毎のコンサートのクオリティを上げることはもちろん、マーラーの録音シリーズ、ルツェルン等国際的な音楽祭への出演などで、国内外での評価を上げた。 - ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団のコンビでのブランド価値を上げた。
彼らの強みは、音楽がとにかくスタイリッシュ&クールなこと。若い観客を惹き込むという点で、これは大きいです。 - デイビスホールを来たいと思わせる場にする。
空間がハイセンスなのもそうですが、 彼らは、とにかく空席があるままコンサートを開かないということに全力投球していています。このにぎわい感が、また来たいという気持ちにさせるのです。 - 社会にとってサンフランシスコ交響楽団が必要だという存在になる。
コミュニティや教育での様々な活動をはじめ、彼らの音楽の魅力でそう思わせたパワーにはすごいの一言です。
問題:クラシック音楽に興味がない、もしくは聴いたことがない(方策2)
興味をもってもらうための活動としては、
- 無料コンサートを開催、そこで最高の音楽を提供する。
- 様々な教育プログラムを通し、子どものうちにクラシック音楽に触れてもらう。
問題:敷居が高いイメージがある(方策2)
これは、入り口部分での次のような工夫です。
- ウェブサイトのコンサートコンシェルジェのコーナーなどで、初めての人の不安を取り除くよう工夫。
- 無料コンサートやファミリーコンサートなど、入り口部分のきっかけになる場を作った。
問題:クラシック音楽は難しい(方策1・2共通)
ここは、彼らも力を入れて取り組んでいる部分なので、別途取り上げます。
問題:コンサートチケットの値段が高い(方策1・2共通)
うまく割引などのメリットを提示しながら、定期会員を増やし、新しい顧客も呼び込み、満席でコンサートを開けるように工夫しています。
- 売れ行きの鈍いコンサートを思い切って割り引いてしまう。
- 値段を抑えた席のカテゴリーを設け、そこは定期会員の席にせず、新しい顧客が入って来やすいよう配慮した。
- 定期会員のラインナップ・特典を充実させる。
- ファミリーコンサートなど、値段を抑えたコンサートの提供。
- 学生やグループ割引などの制度。
(2007.3.2)