クラシック音楽は難しいか?
ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団は、この問題に力を入れて取り組んでいます。どのような取り組みなのかご紹介しましょう。
問題:漠然と難しく感じる
彼らは、KEEPINNG SCOREシリーズの初回に、これを取り上げました。彼らが伝えたメッセージは、
あらゆる芸術は、もとをたどれば、生きるとはどういうことかをテーマにしている。クラシック音楽も人々の生活や感情など、人間の本質と結びついたものであり、私たちの身近に既にあるものである。
というもの。チャイコフスキーの交響曲第4番を、シンプルなものに還元するという手法で、このメッセージを伝えています。
問題:聴いても、ピンとこない
これについて、ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団が出した答えは、「クラシック音楽を楽しんで聴くためには、座標軸が必要だ」というものです。彼らのあらゆる仕掛けは、この座標軸をもってもらうためのものといえます。
では、座標軸とは何か?
曲がどのような素材からできていて、作曲家が伝えたかったことは何か、どういう点に工夫したのか、その曲は歴史的にどこに位置していて、過去とどう関係していて、未来にどう影響を与えたのかなど、聴く人にとってヒントやアイディアになるものが座標軸なのだと思います。
彼らがやっているプレトークも、ファミリーコンサートのテーマも、KEEPING SCOREの昨秋のシリーズも、内容はすべてこれについてです。
では、こんな面倒なことに効果があるのか?
私はあると思っています。実際、私はコープランドの音楽を聴いたことがなかったのですが、KEEPING SCOREを見た後、そこで取り上げられていなかったクラリネット協奏曲を聴いたとき、どうしてこういう音楽なのかを自分の中でクリアに感じたのです。私と同じクリア感を、ベートーヴェンでもストラヴィンスキーでも感じた人がいたら、ものすごい効果だと思います。
問題:曲がたくさんありすぎて、何を聴いたらいいかわからない
これも、難しいと感じさせる一因でしょう。
彼らは、コンサートコンシェルジェで、クラシック音楽を分類して見せています。
曲想とか楽器の編成、時代区分などを視点にもつことで、膨大な情報の中から自分で選ぶことができることを示すことも、座標軸をもってもらうことにつながるのでしょう。
(2007.3.3)