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オーケストラのオーディション傾向と対策
ニューヨーク・タイムズの過去記事に、ニュー・ワールド交響楽団の活動を紹介し、最大の関門である、どうやって就職させるか?を徹底取材した記事がありました。
メンバーのオーケストラのオーディション受験に密着取材していますが、読んだだけで胃が痛くなる厳しさ。
オーケストラのオーディションの様子を詳しく紹介していますので、興味のある方にはおすすめです。ここでは、記事で目に付いたところをピックアップ。
組織ぐるみで傾向と対策
ニュー・ワールド交響楽団は、既に600名以上の卒業生を世界中のオーケストラに送り込んでいますが、これが組織をあげた取り組みの成果であることが紹介されています。
各オーケストラの情報収集は、オーケストラ毎の好みにまで及びます。オーディション対策では、途中で聴こえよがしにあくびされたらどうするか?間違ってしまったら、やり直させてくれと言うべきか?等々。
さらにどの曲がどのパート(ファースト、セカンドなど)で出題されても対処できるための指導と準備。
そして様々に繰り返される模擬オーディション。
ティルソン・トーマスもこれに付き合っているというから、気合のほどが窺えます。
一番重視しているのが、オーディションで力を出すための精神面のコンディショニングで、ホテルの部屋が快適でなかったときの対処法まで指導するとのこと。
プロの音楽家に必要なものは何?
ニュー・ワールド交響楽団が提供しているメニューは、音楽だけではありません。
ファイナンス面の管理、寄付者との話の仕方、マスコミへの処し方などもカリキュラムに組まれています。
オーディション対策にしても、これらにしても、後はご自由にどうぞ的な日本とは随分違います。
順風満帆ではなかった
新キャンパス工事も着工し、順風満帆に見えるニュー・ワールド交響楽団ですが、ここまで来る道のりは、順風満帆ではなかったことも紹介しています。
まずティルソン・トーマスや彼が連れてくるスーパースターが教えるという点はよいとしても、彼らを安い値段で聴けるという仕組みに、地元のミュージシャンから強い反発があったそう。
また最初のボードのチェアマンにスキャンダルが起きて、刑務所に行っちゃったとか。
それらを乗り越えてここまでやってこれたのは、財政基盤を確保できたことと、ティルソン・トーマスの半端ではないコミットメント、ものすごい量の地元へのアウトリーチ活動によると伝えています。
親の背中を見て子は育つ
日本で音楽大学を卒業して間もない若い演奏家の演奏を聴くと、技術的には皆高水準なのに、音楽を楽しんでいるように見えない(聴こえない)ことがままあり、私はそれがとても気になります。
これは多分、教える側に音楽を楽しむという雰囲気がないから、教えられる側もそうなるのだと思います。
そういう点でも、どう見ても楽しそうにしか見えないマイケル先生のような方に音楽教育の最前線に立っていただくことは、測り知れない効果があると思う訳です。
この記事で出てくるニュー・ワールド交響楽団のコンサートの様子なども、日本の音楽教育を担っている諸先生方が見たら、卒倒しちゃうかもというくらい飛んじゃってます。
ティルソン・トーマスがここまで教育にがんばれるのは、結局のところ、彼が若い頃にロサンゼルスで受けた偉大なアーティストからの影響にいかに感謝しているかによるような気がします。
アーティストとしては、若くしてスターダムに躍り出た後、山あり谷ありだったMTT。彼がその経験をふまえて提供できるものや、常にチャレンジを続ける姿というのは、若者たちにとって最高のロールモデルなのではないでしょうか。
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By DANIEL J. WAKIN
Published: February 18, 2007
The Face-the-Music Academy