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オーケストラとは何か?サンフランシスコ交響楽団の創立100周年プログラム
サンフランシスコ交響楽団が、創立100周年を迎える 2011-2012シーズン の記念プログラムを発表しました。
次の100年に楽団がどうあるべきかを定義すべく、楽団の過去・現在・未来を映し出す内容となっています。
オール・アメリカン・プログラムのフェスティバルとツアー
100周年の目玉企画は何はさておきアメリカン。MTTの“アジェンダ”ですから。
2012年3/8~17の2週間にわたりサンフランシスコで American Mavericks フェスティバルを開催します。これは2000年に大成功を収めた企画で、彼らのシンボル的存在。
取り上げる作曲家は、John Cage, Morton Feldman, Carl Ruggles, Edgard Varèse, Charles Ives, Aaron Copland など。これに100周年記念で委嘱した John Adams と Mason Bates の新作が加わります。アダムズ作品はオーケストラに弦楽四重奏を組み合わせたもの、ベイツの方は、エレクトロニカと合唱が入る大規模な作品。
登場アーティストは、Jessye Norman, Emanuel Ax, Meredith Monk, Jeremy Denk, the St. Lawrence String Quartet など。
フェスティバルは演奏だけでなく、様々なシンポジウム、パネル・ディスカッション、学生とのコラボレーションなどが組み合わされます。また、作曲家やその足跡などについて探求やディスカッションの場となるインタラクティブなオンライン・コンテンツを提供。
ツアー
このフェスティバルをサンフランシスコだけでなく、ツアーでも敢行。
シカゴのシンフォニー・センター、ミシガン大学(大学と組んだ様々な教育プログラムを含む)、そしてカーネギー・ホールとの共催で3日間のニューヨーク公演。
ツアーでも様々なシンポジウム、パネル・ディスカッション、学生とのコラボレーションなどを組み合わせて開催。
どんな企画なのかがわかる
7大アメリカン・オーケストラの競演!
サンフランシスコ交響楽団の100周年を祝い、史上初の企画。ビッグ5+ロサンゼルスのメジャー・オーケストラがデイビスホールにやって来ます。
各オーケストラが2プログラムを披露するのですが、サンフランシスコ交響楽団からは各オーケストラに対し、それぞれが委嘱した現代の作品とそのオーケストラのアイデンティティを感じさせるような作品を選ぶようにお願いしたそう。
そしてこの集結は、アメリカン・オーケストラのパワーと自分たちは未来に向けて力強く前進するということの社会へのメッセージらしい。ビジョナリーだ。
各オーケストラとも“らしい”選曲です。日にちが集中していないので、SF在住者以外は全部聴けないところが玉に瑕。
- ドゥダメル/LAフィル 10/23,24
メキシコの作曲家Enrico Chapelaのエレクトリック・チェロを組み合わせた作品、アダムズ作品、幻想交響曲、プロコフィエフ5番
- レヴァイン/ボストン響 12/6,7
Elliott Carter(レヴァインといえば)、ダフニスとクロエ第2組曲(ボストン響といえばフレンチ)、マーラー1番(SFでマーラーをやるのはリスキーだけれど、オーケストラは大ハッスルするかもしれない)
- ムーティ/シカゴ響 2/14,15
Mason Bates(コンポーザー・イン・レジデンス)、Anna Clyneの新作、フランクの交響曲、シューベルト9番。ムーティは1990年以来のベイエリアへの登場だそう。確かにムーティにベイエリアは似合わない。
- ウェルザー=メスト/クリーブランド管 4/15,16
Kaija Saariaho、Thomas Adès作品、メンデルスゾーン3番、ショスタコーヴィチ6番など
- ギルバート/ニューヨーク・フィル 5/13,14
ブロンフマンでMagnus Lindbergのピアノ協奏曲、チャイコフスキーの4番、ドビュッシーの海、ラヴェルのラ・ヴァルスなど。
- デュトワ/フィラ管 6/9,10
イランの作曲家 Behzad Ranjbaran の作品、ショスタコーヴィチ5番、ヒンデミット:ウェーバーの主題による交響的変容、スクリャービン:法悦の詩など。
このメジャー・オーケストラ企画では、オーケストラのボードや管理部門の方々も集め、オーケストラの役割等についてのシンポジウムやディスカッションも行われる予定。
あらためて登場メンバーを見ると壮観
プロジェクト・サンフランシスコ
2008年からやっているコンポ―ザー・レジデンシーとアーティスト・レジデンシー。一人のアーティストを集中して多面的に取り上げるもの。
100周年記念のコンポーザーはメイソン・ベイツ、アーティストはジョシュア・ベル。
ベイツは引っ張りだこですが、やはり彼のお兄さんな風情とアップルのPCで演奏するサマ、そしてそれらとオーケストラの組み合わせで出てくる音楽が新鮮で、若い聴衆へのアピールということを考えたときに真っ先に浮かんでくるのだと思います。
ベルはもうアメリカでの人気はすごいものがあります。
サンフランシスコの気質をたどるコンサート!
実にサンフランシスコらしい、サンフランシスコの歴史を音楽で振りかえるセミステージ形式のコンサート(2012年5月)が企画されています。
1848年の金の発見から街が発展、その後1906年に大地震があり、1911年にSFSが創設。サンフランシスコがいかに自主独立、相互扶助で成り立ってきたかをティルソン・トーマスとオーケストラが描くもの。
アメリカでも特殊、世界でも稀に見る開拓精神をのぞき見られて面白そう。MTTはトマシェフスキー以来、歴史発掘ものに自信をつけているのではないでしょうか。
歴代音楽監督が登場
サンフランシスコ交響楽団の発展に寄与した二人の歴代音楽監督が登場。
まずエド・デ・ワールト(1977-1985)。彼の時代にそれまでオペラ・ハウスを共用していたのからデイビスホールで年間にわたってコンサートを提供できるオーケストラになったのだそう。
ブロムシュテット(1985-1995)とは今も良い関係が続いていますが、今回の100周年記念では在任時代を象徴するニールセンを取り上げます。
サンフランシスコ交響楽団は小澤にも出演依頼したのだけれど、確実に舞台に上がれるかわからないとの理由で出演かなわず、残念。
アレクサンダー・バランチックも10周年祝い
コンサート・マスターのアレクサンダー・バランチックもサンフランシスコ交響楽団に移って10周年とのことで、彼をフィーチャーした企画も組まれています。
シュニトケのコンチェルト4番のソリストの他、指揮、室内楽など。
コミュニティでの記念行事
オープニング・ガラ
ゲストはパールマンとラン・ラン。ガラの運営陣にはこれまでサンフランシスコ交響楽団を支援してきたメンバーが顔を揃えるそう。
シビック・センターでのバースデイ・パーティ
シーズン・オープニングの翌日は、シビック・センターの広場で100周年祝いを開催。これは無料のアウトドア・コンサートとお祝いイベントを組み合わせたもの。
指揮はMTTでゲストはラン・ラン。野外にピアノを持ってくる根性に驚きますが、かなり大きな広場なので、すごく盛り上りそう。
教育プログラム
教育プログラムも規模が拡大されることが発表されました。
大人のアマチュア音楽家に向けたプログラム
新しい取り組みとして、大人のアマチュア音楽家を対象としたプログラムを開始します。
アマチュア・オーケストラとアマチュア合唱団をシンフォニーが支援するプログラムと、アマチュアの室内楽活動をサポートするプログラム。
室内楽の方は、メンバーを募ったり、演奏を指導するのにオンラインを利用。
プログラムの詳細は後日発表予定。
公立学校向け教育プログラム
サンフランシスコ交響楽団の教育プログラムは、これまでK-1~5(日本の小学校に相当)を対象としたAdventures in Musicというプログラムが全ての公立学校をカバーしていました。
ミドル、ハイ・スクールに対しては、Instrument Training and Support というプログラムを2006年に開始。これは学校のオーケストラやブラスバンドを対象にしたもの。学生への指導、先生への指導、楽器や楽譜のサポート等を総合的にシンフォニーが行う内容となっています。
この対象校を今回サンフランシスコの全ての学校オーケストラやブラスバンドに拡大、K-1~12の公教育のすべての段階に教育プログラムを提供する体制になります。
大学のコンピューター・ゲームやバーチャル技術研究と提携
サンフランシスコ交響楽団では、SFS Kids という子ども向けの学習ウェブサイトがあり、高い評価を得ていますが、今回世の中の技術の進歩に合わせて、サイトの内容もパワー・アップさせます。
カリフォルニア大学のコンピューター・ゲームやバーチャル・ワールドを研究するセンターと提携。最新のコンピューター・ゲームのテクノロジーを反映させたものにする計画とのこと。
メディアを使った100周年企画
- 100周年史の発刊
- ドキュメンタリー・フィルム(DVD等で出そう)
- 展覧会
- 公共図書館
写真、映像、ポスターやプログラム類の展示
トーク、演奏、パネル・ディスカッションなどを組み合わせて - サンフランシスコ国際空港
ターミナルでサンフランシスコ交響楽団のビデオを流し続けるそう。名案だ!
- 公共図書館
- アーカイブの演奏録音・映像
オンラインで様々に提供予定
各プロジェクトの詳細は追々発表になるでしょうが、とにかく何を体験できるのか、楽しみ。
(コンサート・プログラムの詳細は2011年3月1日に発表予定)
参照
- プレスリリース
- サンフランシスコ交響楽団の100周年ページ
(写真・動画あり) - サンフランシスコ・クロニクルの記事
(うまくまとまっている)
(2010.12.7)