トップ>バーンスタイン・フェスティバル&カーネギーホール公演>here
オリヴァー・ナッセン&ベートーヴェン第九
ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団の秋のニューヨーク公演、最終日です。
オリヴァー・ナッセン交響曲第3番
今回、ベートーヴェンの第九と組み合わせる曲に選ばれたのは、ナッセンの交響曲第3番。1楽章からなる作品です。
この曲は、ティルソン・トーマスが79年にロンドン響で初演したそう。MTTは、ニューヨークでもマイク持って曲についての話をしていました。
曲は、オーケストラパートとソロパートが交互にあらわれる構造になっていて、ソロがハープ、チェレスタ、ギター、マンドリンという組み合わせ。
ティルソン・トーマスの選曲のおかげで、サンフランシスコ交響楽団は、ハープとキーボードに俄然脚光があたる。今回もこの手のプログラムに欠かせないロン毛のピアニストのお兄さん(と言っても結構年齢いってそうだが、センスがばっちり合っている。Sutherland氏)が登場。
演奏はオーケストラも曲がすっかり手中にある感じでした。
ベートーヴェン交響曲弟9番
そしてメインの曲は、ベートーヴェンの第九。このコンビでベートーヴェンを聴くのは初めてですが、KEEPING SCOREのエロイカが素晴らしかったので期待大です。
出だしからものすごい集中力とテンション。いつもこうなので、いつもの調子と言えばそれまでなのですが、やはりオーケストラの温度が高いと思います。
2楽章は、すべての「タンタタン」と「タタタタタタ」がきっちり詰められていました。
今日は何と、2楽章が終わったとき、ティルソン・トーマスがハンカチを取り出して汗をふいていました。私が彼らのコンサートに行き始めてから2年で初めてのことです。髪も直していました。MTTって、演奏中に髪の毛に絶対手がいかないのです。ケント・ナガノとかサロネンとか、よく髪の毛かき上げていますけれど、MTTはさわらない。
今日はティルソン・トーマスをよく観察できるサイドのバルコニー席だったのですが、やっぱり衣装は新しい衣装だと思います。ジャケットのえりのデザインが先シーズンと違う。黒いジャケットに黒のポケットチーフという取り合わせが、さりげなくおしゃれでした。
話第九に戻りますが、今日の演奏で特筆すべきところは、4楽章の最初に歓喜の歌のテーマが弦で出てくるところです。それはそれは美しかったです。ティルソン・トーマスが常々「一人で演奏しているかのように」と言ってきた甲斐あって、本当に一本に聴こえたし、声部のとけあう感じも絶妙でした(演奏後に彼らを最初に立たせてましたから、やはり彼らにとっても会心の出来だったのだろうと思います)。
歌手は4人とも重量級(Erin Wall、Kendall Gladen、Garrett Sorenson、Alastair Miles)。アメリカで活動している歌手って、名前見ても全然わからないのですが、不満は全くなかったです。合唱はNew York Choral Artists
ティルソン・トーマスもずっと口パク(だと思う)で歌っていました。ソリストが歌っているときもやっていたので、横であんなに動かれた上に口も動かされたらうっとうしいだろうなと思いましたが。
そんなこんなの試練を乗り越え、合唱が、Freude, Shoener Goetterfunken, と入るところが本当に決まった。
全般に合唱が入るところは、オーケストラを抑え目にして、各声部の入りを際立たせていました。コーダのテンポは速かったです。
曲が終わったとたんにお客さん総立ちでした。
このコンビの第九を聴けて幸せ。ファンで良かった。
毎回のコンサートが、他のオーケストラだったらさっさとCDにして売ってしまうような内容だと思いますが、そうしないところがティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団。コンサートは一瞬で終わってしまうので、本当にもったいないと思います。
ニューヨークに来る前は、金融危機のさ中のコンサートってどんな感じなのだろうとおっかなびっくりでしたが、コンサート会場にいる限りは普通と変わらない感じだし、カーネギーだけでなく、METもニューヨーク・フィルもお客さんがよく入っていました。
それだけアメリカには人がたくさんいて、ちょっとやそっとではそれ一色にならないということなのだろうと思います。
(2008.9.26)