マイケル・ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団
アイヴズ:アメリカン・ジャーニー
ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団の真髄
サンフランシスコ交響楽団のサウンドは、アイヴズのために作りあげられたのではないかと思うほど、アイヴズはティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団の中心的なレパートリーです。
このCDは、そんな彼らの取り組みを余すところなく披露した作品集。彼らを知らない人に一枚だけCDを紹介するとしたら、私はマーラーでもストラヴィンスキーでもなく、このアイヴズを選びます。
選曲や配列も、ヴォーカル(ハンプソン)や合唱曲などの取り合わせも演奏も、全てが考え抜かれていて楽しめる。これぞティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団コンビだと思います。
私はサンフランシスコ交響楽団のファンだと話をすると、「理由は何?」とよく聞かれるのですが、
「アメリカンだから」
と答えています。この「アメリカン」という言葉は人によって想起するものが違うらしく、たいていは「それ、MTTのアメリカンと違うと思う」ものをイメージされちゃいます。
サンフランシスコ交響楽団のオーケストラメンバーがプロムスのトークイベントで話をしたとき、ティルソン・トーマスのアメリカ音楽への取り組みは、
「his agenda」
なのだと表現していたのですが、うまいこと言うなと思いました。
アイヴズは最初、ノスタルジックなのに変な音が混じってるとか、順調に行くのかと思ったら、途中からゆがんじゃってあれれ?という感じですが、慣れるとそこがやみつきになります。
鐘の音など、本当に近所の教会から聴こえてくるようにしか感じられないのに、やっぱり変な音が一緒に鳴っている不思議な世界です。