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「マジックの舞台裏」を紹介

世界中のリスナーから支持の声があがったティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団のマーラー・プロジェクト、新譜「大地の歌」が発売されました。

うちでは注文したCDがまだ届いていないので、地元紙サンノゼ・マーキュリーが「マジックの舞台裏」という題で、レコーディングに密着取材し、いろんなエピソードを披露していたものをご紹介します。

機材一式持ち込み

録音エンジニアのチームは、シュトゥットガルトからやって来るのですが、マイク、ケーブルはじめ、録音機材一式は持ち込みだそう。

ゴールド製のマイクが38本だそうですが、確かにサンフランシスコ交響楽団のメーキングを見たとき、ものすごい本数のマイクがセットされていました。

要注意人物M

プロデューサーのノイブロンナー氏は、ティルソン・トーマスがロンドン響とストラヴィンスキーの録音をしたときに、代役で担当したときからのつきあいだそうですが、担当になったとき、周りから

「気をつけろ。超神経質でわがままプリマドンナ姫(超訳)みたいな奴だから」

とさんざん言われたのだとか。実際に会ってみたら「くだけたカリフォルニアンだった」そうですが、きっと波長が合ったのでしょう。このMTTの言われようがまた、「すべての原因はあなた自身にあるのです」という、よく自己啓発本に書いてあるフレーズを思い出させます。

MTT Note

録音中は、エンジニアが歌詞の発音から奏者の音程、気づいた点などを全部スコアにチェクし、それをフィードバックしていくそうです。

さらに、その日録音したものを毎晩ティルソン・トーマスが家に持ち帰って聴き、翌日「MTT Note」として、エンジニアたちやオーケストラ、ソリストに改善点をサジェスチョン。さらなる質の向上をはかるという作業を4日間毎日繰り返すのだとか。恐るべし。

MTTには、MTT Filesだけではなく、MTT Note もあったのか、、、

他の自主レーベルでCDを出しているオーケストラでは、専らエンジニアが制作したものを最後にマエストロが聴き、OKをもらうと雑誌で読んだことがありますが、サンフランシスコでは、マエストロは最初に聴くのです。

機材から不審な音?

この「大地の歌」では、2日目の録音途中に突然機材が、「ギュオン、ギャオン」言い出し、途中正常に録音できていない部分が出てしまったのだそう。プロジェクトの開始以来、初めての機材トラブルだったとのこと。

幸い、DSD録音の他にPCM方式でもバックアップを録っていることから、致命的な問題にはならなかったそうですが、周到に準備していても本番というのは、何が起こるかわからないものです。

組織をあげて作り上げるパワー

デイビスホールに即席で設けられたエンジニアルームには、エンジニアのチームはもちろん、経営幹部、アソシエート・コンダクターやMTTのアシスタントもスコアを持って集合。

固唾を飲んでモニターと流れてくる音に集中している様子が紹介されています。

また終演後は、オーケストラ・メンバーもソロの出来をチェックしにやってくるのだそう。

今、これほどまでに組織をあげて一丸となり、自主企画プロジェクトを作り上げているオーケストラはないのではないでしょうか。

このパワーが、サンフランシスコのお客さんはもちろん、私も含め、みんなの応援を引き寄せているのだと思います。

それにしても、マイク持って出てきたMTTの客席へのお願い「咳は楽章の間でしてください」って、ご無体な言い分でおかしい。

(2008.9.9)