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世界的なオープンエデュケーションの潮流とKEEPING SCORE

ウェブで学ぶ-オープンエデュケーションと知の革命
梅田望夫 / 飯吉透 ちくま新書

を読みました。米国発で世界的に広がっているウェブを利用したオープンエデュケーションの潮流とその背景となる思想、現在展開されている様々な事例を紹介し、この流れをどう自分に生かしていくかを考えさせる本。

教育というのは、ウェブの良い面を生かせる分野であり、これを利用して教育を画期的に変えていけるのではないかという多くの取り組みは、まさに今動いている、大きな可能性を秘めたパワーを感じさせます。

そしてサンフランシスコ交響楽団のKEEPING SCOREプロジェクトも、こういう流れが背景にあってこそ出て来たチャレンジであるということがわかります。

非常に啓発される本なので一読をおすすめしますが、私が「なるほど」と思ったのは、ウェブのコンテンツというのは、自分から能動的に動かない限りアクセスできず、ウェブ上の学びにおいても自分で何らかの行動をすることが要求される。

これに対して、例えばテレビなどは、受け身で座って見ているだけで学べる。

前者の学びが向いている人と、後者のスタイルの方がより吸収できる人がいる。

という話。そう考えてみると、ティルソン・トーマスやサンフランシスコ交響楽団がそこまで考えてプロジェクトをデザインしたかどうかはわかりませんが、KEEPING SCOREのコンテンツは、受動的なもの(テレビ、ラジオ、ビデオ)と能動的なもの(ウェブサイト)、そして学校教育における先生方のノウハウやナレッジを共有する仕組みが組み合わされており、学校教育も社会人教育も視野に入れたソーシャルなツールとしてよくできていると思いました。

インターネットを利用した音楽教育におけるナレッジの共有

本の中でオープンエデュケーションには、オープン・テクノロジー、オープン・コンテンツ、オープン・ナレッジの3つがあり、オープンエデュケーションが実際にうまく機能するためには、教育をする側と受ける側のナレッジの部分をどう共有していくことができるかが鍵であるという指摘がありました。

この点についても、ティルソン・トーマスは現在取り組み中です。

MTTはニュー・ワールド交響楽団(ニュー・ワールド・シンフォニー)で、プロフェッショナル・ミュージシャンの育成においてウェブを利用したナレッジの共有ということを構想しています。

過去にインタビューで語っていたのによると、プロフェッショナル・ミュージシャンが曲の勉強、技術面、身体のメンテナンスなど様々な問題に直面したとき、ウェブを利用して様々な国や場所、年齢、いろんな分野の先輩や仲間のミュージシャン、専門家とつながり、そこから自分にとって有用なアドバイスや情報を得ること、また仲間とつながることで問題を解決したり成長のきっかけをつかむ仕組みをつくり、過去の経験や叡智を次世代により生かしていこうというもののよう。

ニュー・ワールド交響楽団の新キャンパスは、インターネットを音楽教育にも生かすことが一つのテーマなので、これからどういう取り組みが出てくるか楽しみです。

(2010.10.4)