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フランク・ゲーリーがマイアミビーチ市と衝突で、MTTの夢が実現の危機

マイケル・ティルソン・トーマスがフロリダのマイアミビーチ市に創設したオーケストラのアカデミーであるニュー・ワールド交響楽団の新キャンパス建設工事をめぐって、建築家のフランク・ゲーリーと市の委員会が激しく衝突。

にわかに暗雲がたちこめています。

この新キャンパス構想は、ビルバオのグッゲンハイム美術館やロサンゼルスのウォルト・ディズニー・コンサートホールを手掛けた世界的な建築家のフランク・ゲーリーとティルソン・トーマスが、子どもの頃からの友人であったことから実現の運びとなったもの。

700席のコンサートホールを備えたキャンパスが公園内に位置し、公園に来た人たちが野外の巨大プロジェクションでコンサートを楽しめるというのが目玉で、キャンパス、市の公園、市のガレージの3つが建築予定でした。

キャンパスの建築費用154百万ドルは、ニュー・ワールド交響楽団が調達済みで、工事も予定通り進捗しているのですが、今回公園とガレージに問題勃発。

発端は、市のガレージの予算が2百万ドル足りないので、公園の予算を減らせないかということだったのですが、その過程でゲーリーの4.6百万ドルの報酬が高すぎる、たかだか公園とガレージに何でこんなに金がかかるのか?もっと安くできる建築家は他にいるだろう?と展開していった模様。

ゲーリー側も市は他に払う分も含めて自分への報酬額だと言っており不当、そもそも自分にはそれだけの価値がある。だいたい公園の10百万ドルの予算が少なすぎる、これ以上侮辱するとプロジェクトから降りると応酬。

今のところ、ゲーリーの構想に沿ったかたちで安く請け負ってくれる建築家を探す一方で、ニュー・ワールド交響楽団の経営陣がゲーリーとも話し合いを続け、落とし所を探っているようです。

ティルソン・トーマスは、この問題は自分が時間を費やす問題ではないとして、ノーコメント。

マイアミビーチの市民からは、自分たちは個人のお金を今回のニュー・ワールド交響楽団のプロジェクトに既に拠出していて、それは累計で50百万ドルにもなっている。それはプロジェクトに賛同したから出したのであり、それを市が個人よりも拠出額が少ないにもかかわらず後から文句をつけて、当初と違う内容に曲げてしまうことは、市民への裏切り行為であり許せないと怒りの声が上がっている模様。

こういう経済情勢ですから市も財政が厳しいのでしょうが、アメリカという国は、行政がからむとたいていロクでもないことが起きる。

こうなったら調達ついでに公園とガレージのお金もMTTが集めれば?という気がしないでもないけれど、公園とガレージでは、ニュー・ワールド交響楽団の法人の「目的の範囲外」になってしまい無理。

ゲーリーは、公園に来た人たちが野外でクラシック音楽のコンサートを楽しめるという、公園からキャンパスへのアプローチ部分のアイディアは「マイケルの夢」であり、何とか協力したいと言っているようです。

ティルソン・トーマスは、現在手持ち案件のすべてがビッグで、成果も大きいけれど、多くの人が関わり、多くのお金が動くものばかりで、本当に大変だと思います。

MTTの髪の毛が見る度に白くなっていくように感じるのは私だけ?

「マイケルの夢」がんばれ。

マイアミ・ヘラルドの記事→    

(2009.4.22)

顛末

結局、公園事業からゲーリーが撤退、入札でオランダのWest 8という会社が引き継ぐことになりました。

市の予算内かつニュー・ワールドの希望も受け入れられたそうです。

ニュー・ワールドは山のような条件を出してきたらしい。いかにもMTT。そもそもこんなに揉めたのは、元をたどれば、公園にコンサートをプロジェクションで放映するという計画をMTTが思い描くようなかたちで実現させるのにとてもお金がかかることに行きつくのではと私は思う(これは絶対に譲れなかったらしい)。

恐るべしMTTなのである。

マイアミ・ヘラルドの記事

(2009.7.12)