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トヨタ芸術環境KAIZENプロジェクト公開プレゼンテーション大会に参加して
トヨタのアート・マネジメント分野における新しいメセナ活動
「トヨタ芸術環境KAIZENプロジェクト」の公開プレゼンテーション大会に参加しました。
このプロジェクトは、約80件の公募から書類選考された5つの企画を公開プレゼンテーションし、3件を審査員の選出で助成対象とするとともに、オーディエンス投票も行い、参加費の1,000円が自分の投票した企画に渡るというもの。
今までにない試みであり、新しいメセナ手法のモデルケースになるのではないでしょうか。関係者の皆さまのご尽力に敬意を表します。
参加して自分なりに考えたことをいくつかご紹介します。
芸術環境KAIZENとは何か?
私がはじめにこのプロジェクトのタイトルにある「芸術環境KAIZEN」というのを見たとき、創作現場の各工程で生ずる、小さな問題の解決案を共有するみたいなことなのかと思いました。
トヨタのカイゼンって、現場での小さな工夫の積み重ねというイメージがあったので。
出てきた企画が、アート・マネージャー間の情報共有に関するものが多かったので、私のイメージと違っていて意外でした。
東京発は悪なのか?
企画の中に、東京で行なわれているセミナー等を地方のアート・マネージャーの方々が、インターネットを使ってリアルで受講できるというものがあったのですが、審査員から
東京が一番いいという発想なのではないか?
という疑問が呈され、私はびっくりしました。なぜなら私は、
アート・マネジメントというのは、ナレッジとかスキル
だと思っていたから。ナレッジやスキルなんだから、どんどん情報共有すればいいし、どこかでうまくいった事例があれば、参考にすればいい。どうしてこういう発言が出てくるかと言うと、結局
アート・マネジメントとは何か?
という出発点が、人によってバラバラだからということだと思います。
その方は、文化を生み出す思想的なものもアート・マネジメントの範囲に含まれると考えているのでしょう。
アーティストこそ社会に出でよ!
企画の中で、「まちづくり」や「教育」「福祉」に携わる人たちに、「アートが使える」と気づいてもらうために、アート・マネージャーの活動を紹介するというのがありましたが、私は異分野の人たちにアートのパワーを気づかせるのは、アーティスト以外にはできないと思います。
だからアーティストこそもっと外に出て人々と関わるべきだし、その手助けをするのがアート・マネジメントの果たす役割なのだと思います。
アートのためのアート・マネジメント
日本は公共ホールがいたるところにある結果、アート・マネジメントもホールを文化拠点として活用していく仕組みという分野に重点が置かれています。
他方で、アートの中身をどう発展させていくかという部分でのアート・マネジメントは、非常に弱い。
私はこの2つを明確に峻別して、別々に発展させるべきだと思います。そうしないと数で圧倒するホール問題で、「アートの創造」になかなか目が注がれないのではないでしょうか。
以上、この他にもいろいろ考えさせられることが多くあったプレゼン大会でした。
今回採用された企画は、今後の経過がネットTAMに掲載されるそうなので、楽しみにしています!
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会場に、ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団の活動を紹介するちらしを置かせていただきました。手にとって下さった方、どうもありがとうございました。
(2008.7.12)