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ジョシュア・ベル/マイケル・ティルソン・トーマス&ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲

MTTの今がわかる

ヴァイオリニストのジョシュア・ベルといえば、映画「ミュージック・オブ・ハート」に登場するヴァイオリニストの一人という認識しかなかった私。

このCDの演奏は、文句をつけるところが見あたらないくらい、見事に弾き切っています。

CDジャケットを見ても、CD評を見ても、ティルソン・トーマスは「指揮」ということしか触れられていないので、ここではMTTの伴奏について書きたいと思います。

このCDはオケがベルリンフィル、レーベルがソニーで国内盤も出ているし、録音も2005年と最近です。

したがってこれを聴けば、ティルソン・トーマスの「今」をおわかりいただける一枚なのではないかと思います。

前から書いていますが、MTTは非常に伴奏がうまい。このCDでもソロとオーケストラの一体感は、常識を超えています。

これは徹底した事前のすり合わせの成果なのでしょう。ここまでコンチェルトでクオリティを追求している指揮者はあまり見かけませんが、現在の彼のアウトプットは、すべてこの調子です。

そして3楽章でのオケの伴奏が裏拍に入るタイミングとか、ラストのテンポのもっていき方などが、まさにMTTならではだと思います。

それにしてもソニー、ベルリンフィルと単発仕事をしているMTT。彼は今どこのレーベルとも新しい録音に関しての専属契約をしていないようですが、メジャー指揮者でフリーランス?

たまにはこういうメジャーなところでの露出がないと、日本ではMTTが生きているかもわからない人が出てきちゃうので、ローカル&自主レーベル路線もほどほどに。

分水嶺はどこに?

私がMTTは伴奏がすごいと最初に思ったのは、はじめてサンフランシスコへ聴きに出かけたときだったと思います。その後、「子どもの魔法の角笛」を聴き、確信しました。

サンフランシスコで聴いたのは、ソプラノのMeasha Brueggergosman(ミーシャ・ブルーガーゴスマンでカタカナ表記はいいのか?)だったのですが、彼女はとてもMTTの意図を理解していたし、声も素晴らしかったです。

彼女は2008/2月にロンドン響でMTTとまた共演するし、ウェルザー=メストも起用しているから、きっと有望なのだと思います。

MTTの伴奏を聴いていつも不思議なのは、彼はソリストに細かく指示を出すときと、全く何もせずに全部おまかせなときがあるのですが、その分水嶺はどこにあるのか?ということです。

私が聴いた中では、ハンプソンに対してはキューの一つも出してなかったです。それどころか、ハンプソンはMTTより舞台の前に立っていて、全く指揮者を見ていなかったのに、歌とオーケストラの息がぴったり合っていました。

やはり長年の共演で培ったものなのでしょう。

この「おまかせ」できる人は何人いるのでしょうか?

そういえばサンフランシスコ交響楽団に対しても、ほとんど何もしないときと、細かく振っているときがあります。これに関しては、練習時間があまりとれなかったときは、細かく振っているのだと思われます。現代音楽など、合わせること自体が難しいもののときは、人間メトロノーム?に見えるときもあります。