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The Thomashefskys がんばる

The Thomashefskys Projectは、ティルソン・トーマスの祖父母であるボリス&ベシー・トマシェフスキーが創設した、ニューヨークのイディッシュ・シアター(イディッシュ語で上演された劇場、劇場名はThomashefsky Theaterだった模様)の活動を現代に紹介するプロジェクト。

2005年にニューヨーク、サンフランシスコ、マイアミで公演し大好評。今シーズン、サンフランシスコで再演する他、シカゴ交響楽団(6月)、ロサンゼルス・フィルハーモニック(12月)でも公演します。

イディッシュ・シアターは、19世紀末から20世紀初頭にかけて、東ヨーロッパ系の民族的な歌と芝居からなる作品で人気を博し、今のブロードウェー・ミュージカルの源流となったそうです。

当時マスメディアが発達する前だったことから、移民が直面した様々な社会的問題も取り上げた舞台で、劇場は一種のフォーラム的役割を果たしたそう。また、公演情報とともに社会的なメッセージを載せた膨大なニュースレターを発行。ニューヨークのロシア系ユダヤ移民の求心的存在だったそうです。

MTTの祖父の葬儀には、3万人も参列者がいたというから、大きな影響力があったのでしょう。

ティルソン・トーマス自身は、生まれたときには祖父が既に他界。ロサンゼルスの家によく来ていた祖母を通しての思い出だそうです。

ニューヨークの図書館にあるアーカイブがものすごい量なのですが、MTTはそれらの残っている記録や楽譜などを基に7年かけて再構成。移民が新しい地でどうアイデンティティを確立していくかというテーマは、古くて新しいことから、それらも織り込みながら、一時代を築いた劇場を振り返り、歌と芝居によるエンターテインメントとして楽しめる作品に仕立てました。

ティルソン・トーマスはずっと図書館に通い詰めていたらしいのですが、彼がアメリカンとは?とか、アーティストの社会に対する責任ということをずっと言っているのも全部このThomashefskyオリジンから来ているのでしょう。

さらにはMTTの究極の目標は、デイビスホールをこの祖父母の劇場のように、文化フォーラム的な場にすることなのではないか、いろんな活動を見ているとそういう気がします。

このプロジェクトをひっ提げて、ティルソン・トーマスはアメリカのオーケストラを巡回。

もはや普通に客演するような登場はなし。各オーケストラにアメリカン特別枠を作らせて登場、みたいな風情をかもしています。

公演予定(2008年)

6/1、3   シカゴ交響楽団
6/11-15  サンフランシスコ交響楽団
12/18-20 ロサンゼルス・フィルハーモニック

公演の感想は、The Thomashefskys 体験記 へどうぞ。 

補足説明 ティルソン・トーマスの名前について

このプロジェクトからわかるように、ティルソン・トーマスのファミリーネームは、もともと Thomashefsky だったのを彼の父が、あまりにも両親の影が大きかったことから、トーマスと名乗ったことによります。

ティルソンは、もともとミドルネームだったのをイギリスメディアがTilson Thomas とダブルネームで呼んだことからこうなったそう。したがって、カタカナ表記だとティルソン=トーマスが正確(どうでもいいけど)。

デビューした頃はマイケル・トーマスと言っていたらしい。MTTは途中でトマシェフスキーに戻そうとしたらしいが、時既に遅し。マイケル・トマシェフスキーではMTTにならないから、今となってはこれで良かったのだと思います。