アメリカ社会のプラス面に触れた~ロサンゼルス編

世界一周プロジェクトも最後の訪問国であるアメリカ合衆国まで来た。ロサンゼルスでは現地在住の大変尊敬している方のお宅にお世話になったので、ネットに公開できない部分が多いのだが、明るい太陽を浴びたLAでアメリカ社会の豊かな部分を体験する、とても貴重な経験を得ることができた。

11月19日

メキシコシティからロサンゼルスまでは飛行機で約4時間(UA293便)。LAのダウンタウンが見えて来た。巨大だ。
街

11月20日

朝10時よりLAフィルのリハーサル見学。指揮は音楽監督のグスターボ・ドゥダメル。スターダムにある音楽家というのはしばしば虚飾に満ちていて、つくられたスターであるケースがままあるが、ドゥダメルからはそういう雰囲気を感じない。指揮をするために生まれてきたような人だなあと思った。リハーサルが終わってから挨拶に行ったら誰にでもフランクに応対していてナイスガイ。この環境でこのスタンスを維持しているのは驚異的かもしれない。
ホール

ウォルト・ディズニー・コンサート・ホールを後にし、同じくダウンタウンにあるリトルトーキョーへ。以前通ったときは朝で人も少なくさびれた印象を持ったが、今回日系のお店が集まっている場所を散策し、きれいに整備されて品揃えが充実していることに驚いた。100均のようなグッズのお店、日本食材のスーパーなど何でも揃う。こういうお店で買い物をして日本と変わらない食事をし、インターネットで日本語サイトを見て、テレビもNHKが半日遅れくらいで朝ドラも「ためしてガッテン」も大相撲も見られるとなると、「ここはどこ?」という不思議な感覚になってくる。
街

リトルトーキョーから南へ下り、南カリフォルニア大学の非常に美しいキャンパスの横を通り、カリフォルニア・サイエンス・センターへ。科学や宇宙、環境などのテーマを多面的かつ楽しめるように見せる、とてもアメリカらしい博物館。ここに2012年の10月からスペース・シャトル・エンデバーが展示されている。

全長37メートル、重さ77トンもある。
展示

1992年から2011年まで25回の飛行を行ったため、近くで見ると想像以上に満身創痍。役目を終えて横たわる姿は感動を禁じ得ない。
展示

スペースシャトル打ち上げの歴史や乗組員、ミッションの様子を紹介するパネルや映像があった。
展示

2012年9月にフロリダのケネディ宇宙センターから建造された地であるロサンゼルスに運んできたときの経過を紹介する映像は面白かった。一般道をエンデバーが通る大騒ぎの様子もアメリカン。
展示

このカリフォルニア・サイエンス・パークはなんと入場無料。非営利活動の仕組みがしっかりあるアメリカならではだろう。

11月21日

朝9時前にサンタモニカに到着。青い空とさわやかな空気の中、しばし散策する。
街

たまにジョギングの人が通る。
街

サンタモニカのダウンタウンの中心であるサード・ストリート・プロムナード。日中は買物客や観光客、ミュージシャンや大道芸人でにぎわっているが、さすがに朝は静かだった。
街

サンタモニカピア。釣りをしている人がいた。
街

LAは明るい。同じカリフォルニアのサンフランシスコと比べてもずいぶん違う。
街

バスに乗ってミッドウィルシャーへ移動。途中渋滞で時間がかかったが、ロサンゼルスカウンティ美術館(LACMA)の前で降りた。オフィスビルがあってフード・トラックが並んでいたので、ベトナム料理のトラックでフォーを買ってみた。ライムがちゃんと添えられている。9ドルと結構な値段。麺が柔らかかったので味は普通。
屋台

ロサンゼルスカウンティ美術館は大きな敷地の中に8つもの美術館を擁し、全体で12万点以上の作品を所蔵するという。まずはブロード現代美術館をゆっくり時間をかけて見て回り、その後アート・オブ・アメリカ・ビルで南北アメリカ、環太平洋のアートを見た。

環太平洋の土着の作品もたくさん展示されていた。
美術館

夜は昨日リハーサルを見学したLAフィルのコンサート。この週はホールの象徴の一つである、「ハリケーン・ママ」と呼ばれるオルガンの設置10周年を祝うプログラム。オルガニストのキャメロン・カーペンターを迎えた豪華版だ。

曲目:
BARBER / Toccata Festiva Op.36
SCRIABIN / Sonata No.4 (transcr.Carpenter)
HARTKE / Symphony No.4 (Sop. Heidi Stober) 委嘱作品
SAINT-SAENS / Symphony No.3

2階サイドの席からは、オルガンの機構が動いて羽のようにパタパタ開閉する様が見られて面白かった。カーペンターはいつものように才気煥発で超絶テクニックだったが、何しろオルガンもオーケストラも音が大きくていたたまれなかった。本番はリハーサルの通りの音楽づくり。演奏後は聴衆の熱狂的なスタンディング・オベーションが起きたが、ドゥダメルが終始オーケストラを立てる態度だったのが爽やかだった。LAフィルはコンサート前にメールで案内される、当該プログラムの関連情報をわかりやすく紹介する映像やコンサート前後に開催される当日のイベントなど、さすがの経営力だった。

11月22日

夕方ハリウッド・ボウルを訪れた(毎年7~8月にLAフィルをはじめ、ポピュラーやジャズなど多彩なアーティストが参加して連日野外コンサートが繰り広げられるフェスティバル会場)。初めて来たのだが、想像したよりも席がきれいに設けられておりとても整備された施設だった。舞台に近いエリアはます席があり、そこにテーブル・セッティングをしてピクニックを楽しむ。料理をケータリングできるレストランも併設。丘の斜面に広がる後方のスタンドはベンチ席になっている。
会場

夏のシーズンにぜひ訪れてみたい。
会場

ビバリーヒルズでは通り毎に街路樹が異なること、丘を上がるにしたがって敷地が広大になり、お屋敷が道路から見えなくなること、ロデオ・ドライブのブランド・ショップはどこにでもあるグローバル・ブランドだけでなく、ローカル・ブランドのお店が並んでいることなど、LAでしか体験できないものがあることがこの街の魅力なのだろう。

夜はLAオペラへ。会場はウォルト・ディズニー・コンサート・ホールの通りをはさんだお隣にあるドロシー・チャンドラー・パビリオン。建物内部は古き良きアメリカといった趣であった。

演目は、Florencia en el Amazonas
作曲:Daniel Cantan
指揮:Grant Gershon
演出:Francesca Zambello
出演:Veronica Villarroel(タイトルロール)

1996年にメキシコ人のカターンによって作曲されたスペイン語のオペラ。世界的なディーヴァ(歌姫)が出身地であるマナウスの歌劇場に帰るために乗り込んだアマゾンを航海する船が舞台の物語。ラティーノ人口が多いロサンゼルスがこの作品を取り上げたことに興味があったし、南米を旅したばかりだったので南米のオペラをぜひとも体験したかった。

音楽はプッチーニを彷彿とさせるものでラテン的な要素はあまり感じさせず、全体として私はあまり作品に感情移入できなかったのだが、蝶をモチーフにしたアマゾンをイメージするアートワークはとても印象的で美しかった。
劇場

今回のLA滞在は、ひたすらアメリカ社会のプラスの面を体験するものであった。プラスもマイナスもレンジが思いっきり広いのがアメリカだと思うが、個人の才覚と行動でどんな「暮らし」を送るかということに果てしない選択の幅があり、そのどれをとってもよい自由というか許容性があるのがこの社会なのだろう。

(2014.11.19~11.23)

続いて、ホノルル編